拙くとも自分のうたを2015年08月07日 23時51分23秒

★我に唄いたいうたあれども              アクセスランキング: 97位

 このところずっと迷い考えていたことを書く。
 音楽の現場に関わるようになって、もう10年近くなるはずだ。

 あちこちで書いたけれど、そもそものきっかけは高田渡の死を受けて、なき小金井公会堂で、彼の友人、仲間のミュージシャンが総結集して追悼コンサートが催され、それに出向いてからだ。その場で血が逆流する様な強い感動と刺激を受けて我が内側に再び音楽が戻って来たのだ。

 うんと昔、自らもフォークギターを手にして、アマチュアで音楽活動はやったこともあったし日本のフォークソングに若い頃は強い関心あったが、約30年もの間、日々の生活に追われてそうした「うた」とは無関心、絶縁状態だった。
 それが、中川五郎氏や岡大介、さこ大介、みほこんたちとの素晴らしい再会、出会いがあり、いつしか週末ごとライブ会場に足運ぶようになる。国崎氏の両国フォークロアセンターとも知り合って一観客から企画にタッチするようにもなっていった。
 さらにそこに、京都の名高い詩人、有馬敲氏の知己を得たことから、自らも再びギターを手にして、拙くも音楽を再開するようにいつしかなった。

 そして、先年秋の、阿佐ヶ谷での、その有馬氏を迎えたライブイベントで、臆面なくも彼らに伍して「デビュー」させて頂いたことは記したと思う。まあ、それだって自らの企画であったから、ゴーマンにも企画者権限で勝手に出たに過ぎない。前座の前座であった。

 じっさいのところ、今はまだ人に請われての出演オファーなど一回もない。理由はわかっている。あまりに下手くそで、わざわざ聴いてみるに値しないからだ。だから勝手に自らあちこちに押しかけたり、自宅の無頼庵で、来たお客様相手に唄っている。運悪く聴かされた方々はいい迷惑であろうが。

 何でそんなことをするかといえば、自分だって唄いたいということと同時に、ある考えの理論と実践から来ている。

 拙ブログの場で、これまでもうたや音楽について度々書いて来たことなのだが、我マス坊の考える「うた」とは、プロの作家たちが作り、プロの歌手によって歌われるものではなく、生活の中や民衆の中から自然発生的に歌として出てくるものだと考えている。
 特別の教育や知識、テクニックがなくても、ときに楽器すらなくても、うたは世界中どこでもあったし、耳から口に、口から耳へと伝播して何百年も唄い継がれてきた。

 それが近代になり、ラジオやレコード芸術が登場すると、そうした本来のうた、生活の中からのうたたちは、商業主義のそれに駆逐され、ほとんどのうたは専門家がつくり会社に管理され、つまらないパターン化したものになってしまった。

 が、米国でのウッディ・ガスリーやピート・シーガーたちが登場したことから、本来のうた、フォークロア、民謡としてのうたに再びスポットが当てられ民衆のうたは復権してきた。
 その流れは60年代半ばの、関西フォークムーブメントとして、日本でも若者たちに大きな影響を与えた。それまでのプロが作って来た商業主義の歌謡曲に対して、素人であった若者たちによる、若者たちが自らうたう「フォークソング」である。プロテストソングとも呼ばれた。

 マス坊は、その頃はまだ子供過ぎたので、その運動には直にタッチしていない。が、その理念はしっかり受け止め、これこそがうたなんだと思春期の入り口で確信した。つまりうたとは、誰だって作れて誰だって唄えるものなんだと。日々の思いや社会に対する怒り、私的な愛と別れの哀しみ等メッセージを唄わなければならない。うたとは本来そういうものであったし、そういうものでなければならないはずだ。

 ならば、その理論を前に、自分も実践しなければならなくなる。そして高田渡に倣い関西フォークの理論的指導者・有馬敲氏の詩にメロディーをつけてギター手にしていつしか唄うようになっていった。

 が、それがである。当たり前のことだが、実に難しく大変なのであった。じっさいにやってみると理論と現実は大きく異なる。
 マルクスやレーニンの素晴らしい理論がソビエト国家でスターリンによってどう歪め変節させられたか以上に困難なことであった。【もう一回続く】

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