アメリカ型資本主義の終焉~トランプ氏とサンダース氏の台頭2016年05月10日 06時29分03秒

★こうして歴史は繰り返していくのか。

 そこに時代背景もその国の事情も関係しているのだろうが、経済が停滞し既成政治が混迷し閉塞状況が生まれ、国民の間で不満が高まってくると台頭してくるものが二つある。
 ファシズムと共産主義である。そんなこと、ちょっこと歴史を勉強した方なら今さら説明不要であろう。
 その二つは大衆の不満や鬱屈した思いに訴えかけ支持を広げていく。その思想は両極端であるが、閉塞した現状を変えるにはそのどちらかしか無いと大衆は二分される。そして、残念なことに勝つのはたいていファシズムのほうで、ナチズムの台頭~ヒトラー独裁政権により大二次大戦となり世界は混乱と破滅の危機に陥ったのは歴史的事実である。
 そして日本でも戦前の大不況下に社会主義、共産主義は支持を広げたが当局に弾圧され多くの主義者が転向したり投獄された。同様な事態は世界中で今も続いている。

 問題の人というか、話題の共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏が登場した今のアメリカ社会も似たような状況で、彼の言動を見ているとまさにヒトラーという稀代のファシストが登場してきたときを彷彿させられる。そしてそこに、民主党には、バーニー・サンダースという、民主社会主義者がクリントン女史を追っている。
 サンダース氏が民主党の大統領候補に指名される可能性は低いとされているが、トランプとサンダースという、ファシストと社会主義者とが共に大きく支持を広げている現実にアメリカという超大国の抱えている問題の大きさが窺い知れよう。

 アメリカは今も昔も世界で最も豊かな国であり、経済、軍事、資源共に誇って来た超大国である。しかし、今は貧富の差が拡大して、それまでいたミドルクラス、金持と貧困層の間にいた中間層の人たち、日本でいうところの「中流」層が貧困に陥り激減し、富める者と貧者のとの格差が近年とみに大きくなってしまっている。
 かつては移民大国アメリカは、そこに行けば、機会が与えられ努力次第で誰でも金持ち、勝者になれるアメリカンドリームの国とされてきた。
 が、度重なる戦争で国家自体が疲弊し経済も弱って来て貧しい者はホームレスに、犯罪や麻薬に手を染め、ごくごく一部の富裕層は、万全のセキュリティで守られ貧しい小国の国家予算にも匹敵する金を思うままに手に入れている。

 カードやローンが支払えず貧困と失業に喘いでいる多くの国民の高まる不満に対して、トランプ氏は、既成の政治家たちの無能のせいだと非難し不法移民が後を絶たないメキシコとの間に彼らが入って来れないよう壁を拵えると訴えて喝采浴びていた。それが現実的に可能かはともかく、そこにナチスがとったユダヤ人政策と同様の発想を感じるのは我だけか。
 政治には全くの素人で既成の政治家たちを攻撃する、「不動産王」という肩書きだけが売りの彼を支持する貧困層は、金儲けに長けている人ならば経済もうまくやってくれるはずだという期待があるに違いない。日本でも成功者人気は低所得層ほど高いとかで、一時のホリエモンのように成功した企業家を政治家に、というニーズはどこの国でもあるらしい。

 一方、元は無所属で活動していたユダヤ人、サンダース氏は、米国初の社会主義者の上院議員であり、その思想や言動は明快だ。確か、彼の弟か兄は英国で緑の党の人だったと記憶する。
 彼は、閉塞した米国社会をもたらしたのは富の偏りが原因だとして富の再配分を訴えている。我もまた「赤」だから彼の政策には大いに共感するしアメリカ人だったならば彼を支持していただろう。彼はごく当たり前の経済の常識を語っているに過ぎない。

 じっさいのところ、巨大資本主義国家アメリカの社会で本来は水と油である社会主義者が、大統領候補に肉薄しているということ自体が異例かつ異常な事態なわけで、それだけ米国社会を覆っている貧困という闇が大きい証だとわかるものだ。

 他国の大統領選挙の、しかもまだ本戦でもない。しかし、もっとも成功したはずの資本主義の本家本元の米国で、トランプ氏とサンダース氏という両極端が支持を広げていることはもはやこの主義のシステムが限界に達したと言えるかと思う。

 拡大する貧困は、世界中に広がっている。それは日本でも韓国でも中国でも全く同じだ。地球上にある富は常に一定だという法則がある。それで貧困層が増えているということは、それだけごくごく一部の富裕層にさらに富が偏っているからである。
 昔から、富=金の配分はパイの切り分けに例えられる。一部の人がたくさん切り取ってしまえば、後の人の分はごくごく薄く、小さくなってしまう。皆には行きわたらない。人が食べられる量は一定なのだからそれぞれ行きわたるよう正しく分配すれば良いのである。が、金持は強欲だから、金は腐らないからますます溜め込んでいくのである。
 この日本でもまったく同じで、金持はますます金持ちに、貧乏人はますます貧乏に、貧困は固定され一度貧困に陥ったら生涯抜け出せないだけでなく、代々貧困は世襲されていく。貧乏で学校にも行けない子が21世紀にいるのである。

 アベノミクスが始まって4年になるかと思う。あなたはそれで収入が増えましたか。生活は楽になり貧困から抜け出せた人たちは、これからも自公政権を支持していく理由もあろう。
 様々な調査でも、生活は変わらない、もしくは苦しくなったという人たちが増えている。確かに株価は少しは回復した。しかし、物価も上がり年金などは削られてちっとも生活は良くなってはいないではないか。株価の上昇は庶民とは一切関係ない。だって企業は儲かってもちっとも従業員には還元しない。いや、還元されるのは正社員だけで、相変わらず多くの派遣と下請けは使い捨てで金はそこにまで回らないからだ。

 この国にはトランプ氏はいない。が、もっとやっかいなアベノミクスという経済の皮をかぶった詐欺師が、ファシズムの本質を隠して今もまだ支持を広げている。
 参院選でも国民はまだ彼らに期待をかけ騙され続けるのであろうか。