余命一年半の父と暮らしていく2017年03月09日 00時35分39秒

★母の死から半年が過ぎて

 月命日であった。我が最愛の母が死んだのは昨年9月8日だから、早や半年が過ぎたということになる。
 もう哀しみは癒えたと言いたいが、今だって、母を死なせてしまったという痛恨と悔恨の思いはまったく消えないしその忸怩たる思いに加えて母のことを思いかえせば涙はいくらだって溢れて出てくる。
 ただ泣いていたって母は帰らないし、ともかく今は目先のこと、このどうしようもない現状を少しでも何とか立て直したいと願うだけだ。

 さて、母が死に、我は痴呆症の92歳となる我が父と二人だけで残された。故あって独り者で、子もない我は父と二人だけの暮らしを余儀なくされた。超高齢の父と初老の、体調不良気味の息子の男同士二人だけの生活である。

 その父は、母が生きていた頃からの呆けもさらに進み、人格はあっても記憶そのものが長続きしないが故、共に暮らし世話する側としては本当に疲弊してしまう。数時間前の事でも失念して、何度でも質問を繰り返すばかりだけでなく、動作すべてがスローとなり、その介助に追われて我の時間は奪われ父が家にいる日はほとんど何もできないだけでなく夜は疲れ果て倒れ込むように寝てしまう。
 友人の多くから、息子一人で世話するにも限界だろうから父はもう特養に入れるべき、我が看れるのも限界だと有難い忠言を頂いた。我もそう願うし、その方向で動きもしたが、何しろ当人がこの家にずっといたい、特養だけは嫌だと抗うので、それもできないで日々が過ぎている。それもこれも仕方ない、我の負うべき業、罪ゆえの罰なのかと今は思い始めてきたことは先に書いた。

 さておき、その父だが、このところ呆け以前に体調にも変化があり、紙パンツの中への小便に加えて、大便までも当人は意識ないままに「失禁」するようになってきた。
 妙に臭いので、トイレに行かせて確認すると、紙パンツの中に、尿だけでなく軟便も大量にしている。当人も驚き呆れ、出た自覚もないのだと言う。
 そうしたことを九州にいる我が実妹にメールで報告した。そしたらば、もうそういう段階になってきたら、内臓もいかれてきたようだから経験上、そんな長くは生きやしない、一年から一年半だろうから、もう少し頑張って看てあげて、とのことだった。

 妹は大分の特養施設に勤めていて、ある意味、そうした死に行く老人と日々接する介護職のベテランである。その見たてに狂いはないだろう。そのメールをもらって、う~むと複雑な気持ちとなった。確かにもう高齢92歳なのだから、あと五年も十年も生きるとは思っていない。しかし、こうして期限をはっきり示されると急に視界が晴れたような、その先が見えたようで、逆に「見えた」ことの不安感から怖くなった。
 むろん先が見えない事のほうがどれだけ辛いかわかりはしない。しかし、見えない事、わからないことは「希望」にも考えようによっては成りうるものだし、見えないことの「不安」はまだどのようにもなる可能性も含んでいる。
 だが、そう先の期限を介護の現場のベテランから宣告されると、そうか、あと一年、もしくは一年半しか父は生きないのか、父とそれだけしか暮らせないのかと思うと、心境はやはり複雑である。
 それで地獄は終わり我は解放されるとして、嬉しいとか喜ぶべきだとは思わない。やはり死を前にすれば、一日でも生かしたいと願うのが人情だし子としては当然そう思うはずだろう。
 しかし、父と過ごすのもあと一年そこらだと、それだけしか残されていないとするならば、それなりに辛抱もできるし対処の仕方、やるべきことも見えてこよう。
 じっさい、このところの食事どきの咽せ咳き込み具合では、いつまた誤嚥性肺炎を起こして入院するかわからないのだ。

 我が父はいよいよ最終段階に、このところの流行りで言えば、新たな脅威の段階に入って来た、ということか。
 では、さて、そういう人をどうやって死なせていくか、だ。長くてと一年半の期間に何が我に、我と父のためにできるか。真剣にタイムスケジュールを立ててできるかぎり適切に、有効にやっていかねばならない。でないと、母のときみたいに、あれよあれよと言っているうち、なし崩し的に死を迎えてしまう。そしてまた痛恨、後悔のときが来る。

 そして誰もいなくなったとき想定し、そのとき、我はどうするのか、親たちを追って死ぬことも含めて考えておかねばと思っている。もう誰もいないのにたった一人で何で生きていく理由はあるのか。もし、そのうえで生きていくならばそういうモードに設定しておかねばならないだろうが。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://masdart.asablo.jp/blog/2017/03/09/8397353/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。