あまりにも若く、そして早い死に2017年06月23日 23時17分14秒

★闘病をブログで「中継」し続けた勇気を讃えたい

 小林麻央さんが亡くなった。まだ34歳、夫海老蔵氏とまだ幼い子供たち二人を残して乳癌での闘病の果ての死である。

 断っておくが、我は女子アナ時代からも彼女のファンでもないし、歌舞伎役者の夫についてもほとんど関心を持たない。お二人ともマスメディアが常に多くとりあげていたからいつしか知るようになったに過ぎない。
 が、彼女が癌に病み、その進展状況をブログで発信していることは、直に彼女のブログを覗かなくとも知っていたし、その状態についてはあまり良くないことも承知していた。
 だからいつかこの日が来ることは予測していたし、驚きはしないが、夫君の「会見」を先ほどニュース番組内で見て、やはり胸が押し潰される思いがした。
 その前に、ネット上のニュースサイトで、その会見内容の全文を目にしたときはほんの少しだが涙が出た。

 我もまた最愛の家族を、我の場合は高齢の母を癌で、自宅で看取った者として、まだこんなに若くして天に召されてしまった彼女の無念とご家族の悲嘆は想像を超えるものがある。もし身近にいたとしても今はどんな言葉も残された人たちにかけようもない。

 そして、そのうえであれこれ思うことを記す。
 我もブログで、癌を病む母の状態と日々の状況はその死まで、いや死後のこともずっとブログで書き続けて来た。我には書くしか悩み苦しむ気持ちを発散させる術はなかったし、このブログがあったからこそ、今もこうして正気を保ち生きている。もし、ブログという、我が思いを外に「発信」する場がなかったらきっと抱え込んだストレスに押し潰されどうなっていたかわからない。 

 しかし、一方こうも考えるときがある。書いたことにより、我や母を知るごく親しい知人はともかく、本来まったく関係のない方々たちにまで、哀しみや死の衝撃、ショックを与えてしまったのではないのか。それは余計なことではなかったかと。
 我がブログに書かなければ本来知るはずもないことなのだから、無関係な方にまで、もしかしたら辛い思い、ご迷惑をおかけしてしまったかもと。

 俗に、死者は生者を煩わすべからず、という考えもある。死とはそもそも極めて「個人的」なことであるわけで、そのこととそれに至ることを世間様に大々的に知らせる義務もないし、逆に知らせば知らすほど他者にもご心配、ご迷惑をおかけすると。そう、じっさい、知人たちの中に病気の人がいると誰でも気になり心配し憂鬱にもなってくる。
 だから死に至る病に侵され、当人や家族がどんなに苦しみ大変であろうと、大変だからこそそれは世間には秘して、死後も内々での葬儀を終えてから「発表」するというように考えて手配する。
 そうした死を隠す「美学」は今も根強くあり、著名人でもそうして死後ずいぶん後になってから発表し関係者やファンには「お別れ会」を催して済ますというスタイルもある。
 おそらくその死そのものを世に秘する「美学」は死に臨むご当人が希望し、家族もそれに従うものだと思うが、周囲の者、抱える側の家族としては死に臨む状況を「隠していく」こともかなり辛いものがあるのではないか。

 また、死ぬまでのことの「実況報告」されなかった者は、知らなくて幸いだと思う者もいれば、逆に水臭いとか、せめて生きているうちに一度は会って励ましたり別れを言いたかったと後々悔やむ思いを持つ者もいよう。
 我もじっさい、そうしてあるとても親しく大事に思っていた人が病気だということは訊いていたが、ある日突然の訃報が届き驚かされ、それほど状態が悪いことを何も教えてくれなかったその家族の「美学」を恨んだこともある。

 今回の麻央さんの死に至る姿は、まさに真逆であり、これまでの芸能人のそれとは一線を画した画期的なものだと我は思う。
 フリーアナウンサーだと彼女の肩書が紹介されていたが、それもまた報道の現場、ジャーナリズムの現場にいた人だと思うし、だからこそブログという手段で、死のほんの数日前まで自らの状況をしっかり「実況」し報道し続けて来たのだと我は考える。それは誰でもできることではない。真に強くなければできやしない。

 そう、人は誰でも死ぬ。老いも若きも関係ない。人生は長さの長短で価値をはかるべきものではない。いかにそこに、生きていた証が示せるかに尽きるのではないか。そして彼女はそれをしっかり示してくれた。
 名門歌舞伎役者の妻として母として、そしてジャーナリストとして小林麻央さんはしっかり生き抜いた偉大な人生だと我は考える。しかし、まさに美人薄命、善人早逝、あまりにも若く早すぎる死だと嘆息せざるえない。
 かたちのない「愛」というものを命を賭して示してくれた稀有な人であったと思う。合掌

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