山梨県の地元スーパー「やまと」倒産、店舗閉鎖の報に。2017年12月07日 21時37分08秒

★辺境の地方では買い物は死活問題、生活に壊滅的打撃を与える事態を憂う。

 おそらく全国のどこの地方でもヨーカドーやイオンなど大企業が経営する全国規模で展開しているチェーンのスーパーではなく、もっと地元に密着した生鮮食品中心のスーパーマーケットは存在しているかと思う。
 山梨県、それも峡北地区、韮崎や北杜市を中心に店舗展開しているのは、「やまと」という名のチェーンのスーパーで、我は北杜市須玉に倉庫兼用した古い民家を縁あって得てからは、その店を山梨へ行く都度愛用していた。
 愛用というのは正しくない。そこしかないので嫌でも頻繁に利用していたのだ。

 今は、北杜市という巨大な市に統合吸収されてしまったが、旧須玉町には、今現在、我が知る限り生鮮食品を扱っているスーパーは清里に向かう街道近くのその「やまと」一軒だけで、他は、コンビニはインター近くなどに点在はしているが、その町には何か買い物に行くとしても商店と呼べる店は、そのスーパー以外一軒もないのである。
 かつての商店街と思われる道はあるが、食堂が一軒あるだけで、あとはいつも半分シャッターが下りてやってるのかわからない酒屋とか、ぱっとしない衣料品店はあるようだが、八百屋も魚屋も生鮮食料品を扱う店は皆無なのである。少し離れたところには、肉屋はあるけれど、もしその町で、パン、牛乳、肉、魚、野菜、さらに惣菜なども一度に買おうとしたらヤマトしかなかった。
 といっても、我の古民家はインター出口からまたさらに山を上っていく山里にあるから、そこまで車でも20分近くかかる。
 けっきょく、我はその須玉のヤマトを利用するか、さもないときは、インターは一つ手前の韮崎で降りて、そこで買い物していくのが常になっていた。韮崎はまだ駅前にかなり繁華な商店街も残っているし、やまとの韮崎店以外にも大きなスーパー、量販店もあり、様々な個人商店も残っている。JAがやっている「よってけし」という名の大きな野菜・果物直売センターもある。
 須玉で降りると買い物したくてもやまとしかないのも困るわけで、やや時間に余裕あるときは、このところはほぼ韮崎で高速道を降りて、あちこちで買い物して、その山里へ向かうのが常になっていた。

 当初、その古民家を紹介され下見に行ったとき、前所有者の方や近所の人たちに、この辺りの住人はどこで食料品を買ってるのかと訊いたら、皆、麓まで下りて、そのスーパーやまとであれこれまとめて買い込むのだと言う。
 お隣の老婦人は一人暮らしで車もないようだけれど、持ってる人と誘い合わせて、やまとまで買い出しに行くと話していた。

 それぐらいその山里では、当然のことながら辺りには商店は一軒もなく、食料品を求めるにはマイカーか本数の少ないコミュニティパスで麓まで下りて、何であれ「やまと」でまとめて買い出しするしかなかったのだ。
 そんな他に生鮮食品を扱う商店が一軒もない須玉の町からも、スーパーやまと自体がなくなってしまう、という記事が、ネット上のニュースサイトで報じられていて、まさに寝耳に水、我は正直愕然とした。
http://www.msn.com/ja-jp/money/news/%e9%a3%9f%e5%93%81%e3%82%b9%e3%83%bc%e3%83%91%e3%83%bc%e3%80%8c%e3%82%84%e3%81%be%e3%81%a8%e3%80%8d%e5%b1%b1%e6%a2%a8%e7%9c%8c%e5%86%85%e5%85%a8%ef%bc%99%e5%ba%97%e8%88%97%e5%96%b6%e6%a5%ad%e5%8f%96%e3%82%8a%e3%82%84%e3%82%81/ar-BBGkD03?ocid=TSHDHP#page=2

 営業不振で、山梨県内全9店舗営業取りやめ、だと報じられている。確かに、韮崎などでは、もっとおしゃれで品揃えの良い、ヨーカドーなど都心とまったく変わらない大きなスーパーも確かにある。
 が、都心から地方に行く者としては、逆に地元産の食材や地元メーカーの食品を多く扱っていたやまとのほうが有難く、行って買い物する楽しみがあった。東京と同じ食品しか並んでいないスーパーに、我はそもそも興味はなかった。
 その意味で、やまとという地元スーパーは、垢ぬけない感じはしたけれど、そこでしか買えない食材も多々あって、その「存在」は有難かったし、あまりこのところは利用してなかったのが本当のところだが、気持ちは「愛用」していたのだ。何しろそこしか須玉町民には買い物の術がないのだから、いつまでも存在しているものと信じていた。まさかそのやまとが倒産してなくなろうとは。

 我は今後も韮崎インターで降りて、野菜や果物類は、須玉へ向かう途中の「よってけし」で買い求めるのは変わらないが、やまとがなくなってしまえば、その地に行く楽しみがかなり減ってしまったことは否めない。
 峡北という山梨県でも北部の山奥といっていい地域なのに、やまとには何故か海産物が充実していて、最初は驚かされた。地図で調べてみると、その地は東京より静岡県焼津に近いわけで、南アルプスを越えて太平洋の魚介類が入って来る地域でもあったのだ。

 それにしてもやまとがある他の地区、韮崎や長坂は、まだ生鮮品を扱う地元商店や他にもスーパーがあるから何とかなるかとも思うけれど、須玉の住民は今後はいったいどこで買い物すれば良いのだろうか。いちいち韮崎まで30分以上時間かけて買い出しに出ないとならないのではないか。
 思うに、そのスーパーやまとが出店したことにより、須玉の商店街はさびれ衰退し消滅してしまったのかもしれない。そしてそのスーパーさえ営業不振で消えてしまえば、その町に残るのは、街道筋のコンビニだけなのである。そこで買えるものは、牛乳やパン、弁当類は何とかなるだろう。しかし、生野菜や魚肉など生鮮食材は手に入らない。

 お読みの皆さんには何も関係ない一地方、山梨県峡北地域の話である。ヒトゴトと思われる方がほとんどであろう。が、これは過疎と高齢化に悩む一辺境地方だけの問題だろうか。
 いや、都心にいても車がなければ郊外の大型スーパーに行くこともできず、老人は近所のコンビニで弁当や出来上がった総菜類を買うしかないのではないのか。
 今住んでる町から生鮮食品を扱う身近な商店、小規模のスーパーが消えていく。残るはコンビニだけとなっていく。これは都市部、田舎を問わず21世紀の日本の大きな問題でありその対策は緊急の課題だと我は考える。
 いくらAmazonが成長し扱う品数が増え全国ほぼどこへで配達してくれたとしても「生もの」までは扱わず、お急ぎ便でも配達してくれないのだから。車を持たない人、足の不自由な人、老いた人たちはいったいどこで買い物したら良いのだろう。

コメント

_ Yozakura ― 2017/12/10 15時23分21秒

増坊さま
 無沙汰しております。
 この山梨県の地場スーパー「やまと」、全店閉鎖の告知、始めは「所詮は、他所の出来ごとだ」と気楽に読み流して居たのですが、半ば過ぎ程まで読み進む裡に、背筋が寒くなって来ました。
 成る程、人口の高齢化と過疎化が並行して悪化する山梨県の北西部では、こうした事態の発生は或る程度は予見できたのやも知れません。しかし、これまで自宅近くでできた「日常的な買い物」が、スーパー一社の全店舗閉鎖に依り、不可能となるのです。
 遠くまで出掛けられない人々には、正に「生活の破綻そのもの」であり、地場スーパーの全店舗閉鎖とは、社会の構造が、地域の生活が、土台から崩壊して往く「社会的な地滑り現象の前兆」なのです。

 念の為、ネット検索をかけてみると、増田さんが言及されている「スーパーやまと」の他にも、神奈川県川崎市の「スーパー五光」の全店閉鎖、東京都三鷹市にある老舗の「ホームセンター・Jマートの閉店と記念御礼特売」など、暗いニュースで一杯!更にネット上で、以下の如き、閉鎖される(既にされた)スーパーマーケットの一覧表を発見!
 検索要素は、以下の通りです。御関心あれば、自己責任に於いて検索なさってみて下さい。

[My Super.jp, 閉鎖の店舗一覧(189件)] 

 上記の閉鎖店舗一覧表には、増田氏が御指摘の「山梨県やまと全店9店舗」の他に、福岡県の地場スーパー3店舗や、川崎市の地場スーパー4店舗、それに、高額な商品を揃えた高級スーパーとして夙に著名な「クィーンズ伊勢丹・さいたま市大宮店」とか、「ピーコック・ストアー、大阪府箕面桜ケ丘店、大阪府北千里店」なども閉鎖の対象となって居ります。

 決して、人口過疎にして高齢化が進行している「過疎地の出来ごと」に限定される事象ではありません。
 川崎市のスーパー五光は、市内でも、嘗て繁栄を誇った重工業地帯で工場が並んでいた地域、或いはそれに隣接した住宅地域に開設されていました。
 福岡県のスーパー3店舗も、そのうち2店は、北九州市小倉北区、そして福岡市西区と、政令指定都市の中心部に在ります。
 高級スーパー「クィーンズ伊勢丹さいたま市大宮店」とは、政令指定都市であるさいたま市の中心に位置する大宮駅に近い繁華街に在ります。

 御用マスゴミが如何に胡麻化そうとも、現実を隠蔽しようとも、愈々、アベノミクスの欺瞞と大敗が、こうしたスーパーマーケットやホームセンターの「全国規模での大量閉店現象」に依り、世にも露わに証明されつつあるのです。
 地域社会の崩壊から、日本経済壊滅の兆しとも成り兼ねない貴重なニュースの紹介、有難う御座いました。お元気で。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://masdart.asablo.jp/blog/2017/12/07/8744279/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。