続・ああプランタン無理もない2018年04月21日 22時29分38秒

★素晴らしき「ラジオ歌謡」の世界

 まあ、要するに「マイブーム」でも、「ユア・ヒットしないパレード」でもいいのだけれど、個人的に今一番お気に入りの、始終頭の中に流れているうたについて書く。つまるところ「マイ・フェバリット・ソング」ということだ。
 世の中には常に外出先でも移動中でも音楽を聴いている人がけっこういる。電車内や街中でも小さなステレオイアホーンで、何かを聴きながらの人をよく見かける。
 意外に思われるかもしれないが、我は音楽は外でも家でもまず聴かない。どうしても曲をコピーするなど聴くべき用事があるときはパソコンなどで聴くけれど、このところは忙しいこともありきちんとオーディオに向き合うこともまったくしていない。
 では、音楽が何もないかというと、そうではない。コンサートなどに関わったり出向くと、その後は特に印象深いそのとき唄われた曲が頭の中にこびりついて、しばらくの間それが流れ続けてしまう。

 先だっては、西島寛二さんの「スライダー」がその彼が出たコンサートのあと何週間も長くずっと頭の中で流れていたし、それがみほこんの楽曲だったり、つい最近では館野公一さんの「箪笥」という曲のサビのメロディーが頭から離れずにいた。
 コンサートばかりではない。テレビの父が好きな歌番組など、うっかり見てしまうと、あまり好きではなくとも頭に入って来て困惑することもある。「ああ上野駅」なども偶然続けて別番組で唄われていたので、ちっとも好きな曲でないのに頭から離れず大いに困った。
 そんな我のこのところのヘビーローテーションの脳内曲がこの「ああ、プランタン無理もない」である。

 もっと早く春先、3月のうちに紹介しようと思っていたのだが、その頃、BSのTBSの「由紀さおりの音楽館」なる番組で、「ラジオ歌謡」の特集をやっていて、そこで紹介され誰だったか若手歌手が唄っていた。
 我は昔から旧い歌手が好きで、藤山一郎が唄うこの曲も知ってはいたのだが、すっかり失念していて、ああ、こんな曲があったなあ、いい曲だと改めて思った。そして、さっそくユーチューブで検索してみたら、その藤山と歌のおばさんこと松田トシが唄っているバージョンが聴けた。
 ただこのゆっくりとした歌曲的テンポだと、我自身コピーして唄うにはけっこう難しい。ギターでは合わせられない。で、もう少し形あるダークダックスのバージョンでギターでコードとってコピーし終えた。
 そのバージョンは、何故か今風の萌え系のイラストがついていて笑えるが、唄としてはこちらのほうが聴きやすいしそのイラストも決して悪くないのでぜひご覧頂きたい。
https://www.youtube.com/watch?v=PS7QUaaxZs0

 それにしてもこの曲は実に素晴らしい。戦後すぐなのに実によくできてモダンであるし今聴いて意欲的かつ新しい。
 何しろ作曲はあの「雪の降る町を」「夏の思い出」の中田喜直、そして作詞はあの天才ロマンチスト、サトウハチローなのである。※サトーハチローについては妹佐藤愛子が健在のうちに一度書き記しておきたい。
 このコンビで、サトーの甘くセンチメンタルかつビビッドな詩に、非常に巧みなロマンチックなメロディをつけた中田の天才同士の奇跡の一曲であろう。
 春先の何とももの憂い夜の季節感をこれほどうまく表現したうたは他にあるだろうか。中でも最初に出てくる「無理もない」というブルース的付け足しフレーズはちょっと誰も考えつかない。

 というわけで、我が脳内ではこのところずっとこの「ああプランタン」が流れ続けていた。おそらく我が生きている限りこれからもこの季節になるとこの曲を必ず思い出すだろうし、近くちょこっとどこかでも唄わせて頂くこともあるかと思う。もっともっと唄い継がれて欲しい佳曲だと信ずる。言うまでもないが「プランタン」とは仏語で「春」のことである。

 ところでその「ラジオ歌謡」とは何か、今の人は何のことだかご存知ないかもしれない。それについても説明したいが長くなるのでまた後日、回を改め書き記しておく。