ウイ―ピング・ハープ妹尾氏を偲ぶ2018年08月14日 21時48分06秒

★ブルースハープといえば、妹尾隆一郎であった。

 ちょっと専門的なことに話は進む。関心のない方はご遠慮下さってかまわない。

 我、マス坊は、下手の横好きというべきか、昔からハーモニカという最小の楽器が好きで、今も様々な種類のそれを集めていることは先にも記したかと思う。
 今では、学校の音楽教育の場でも、ピアニカのような鍵盤タイプのハーモニカは使うことはあっても手で持って口で吹く、昔ながらのハーモニカは用いることはすくないと知って複雑な気持ちになったことも書いた。
 ただ、そうした昔ながらのとは違い、もっと小さな10穴のハーモニカは、ディランや拓郎、長渕、ゆず、ら、人気アーチストが今も頻繁に使っているので、ミュージシャン志望の若者たちには一定の需要はあるのだと聞いている。

 我もそうした10穴のそれ、テンホールズとか、ブルースハープと呼ばれるハーモニカは、メジャーもマイナーのも全て揃えて、このところはヤフオクで、複音ハーモニカにまで手を伸ばしたので今やそのコレクションはかなりのものとなった。
 しかしそもそもそうしたハーモニカなる楽器にきちんと向き合うきっかけとなったのは、一人の天才的ハーモニカ奏者を知ったことが大きい。
小学校で習うハーモニカとはまったく違う、ごく小さいブルースハープという世界の広さと深さを教えてくれたのは、「ウイ―ピング・ハープ・セノオ」氏であった。
 妹尾隆一郎と書いて、「せのお」と読む。彼こそが今も昔も日本のブルースハープの一人者で、彼のように泣かせるハーピストは我は他に知らない。

 今日、フォーク界のみならず日本のポピュラーソングシーンでは、ブルースハープ奏者というと、ありちゃんこと、松田幸一氏がまず筆頭格であろう。多くの教本も出しているだけでなくあちこちで講座も開かれて多くの教え子たちがいる。全く異論はないし素晴らしいテクニックである。
 私感だが、知る限り、日本のフォークシーン界隈でのハーモニカ名人と言えば、まずシバ、そしてヤスこと朝比奈逸人、松田幸一であろう。
 彼らはそれぞれがすぐれたシンガーであり、ソングライターであり、ハーモニカも達人であった。
 ※ちなみに、風太から昔聞いたはなしでは、確かありちゃんは、車で学校給食の牛乳配達するバイトしながら、運転中ずっとハーモニカを咥えて練習して上手くなったとのことだが、ほんまかいな、である。

 が、ちょっと彼らから離れて、真にブルースハーモニカだけの奏者として誰がいるかというと、日本のロック、ポップス界では、「ウイ―ピング・ハープ」妹尾隆一郎しかいなかった。むろん昔ながらのトレモロハーモニカやクロマチックハーモニカの世界ではそこにはそこの達人はいたと思う。我が知らないだけで。
 我は若いとき、彼のアルバムを偶然手に入れて、ほんとびっくらこいた。ちょうどその頃、本場のそれみたいな「本格派」ということがウエストロードブルースバンドが出て来て以来あちこちでとりざたされていたが、まさに彼のハーモニカは本格派であり、本物であった。日本人で、こんなふうにポール・パターフィールドみたいに吹ける人かいることに衝撃を受けた。
 
 以来、我の中では、ウイ―ピングハープ妹尾という名前は、ハーモニカの神様として、まさに別格として、永遠の憧れとなっている。そして、拙くとも我もまたハーモニカをステージで吹くときは、妹尾氏のことを常にどこか意識していたと思う。
 彼がすごいのはディランや拓郎のように、歌手が1人で演るとき、唄の合間にメロディを吹いて、うたのサポートに過ぎなかったハーモニカという小楽器を、きちんと独立した楽器として世に認めさせ確立したことであろう。ハーモニカとは、ただギター弾きながらホルダーに挟んでプカプカ吹くだけのものではない立派な独立した一つの楽器なのだと。

 正直に告白すると、あれこれ忙しさと雑事にかまけて近年ずっと妹尾氏のことは失念していた。
 が、昨日、ヤフオクで偶然、氏の教習DVDが格安で出ていて、ちょうど先に夢中になってレコードとか落札したときにクジひいて溜まっていたポイントもあったので、数百円で落札してみた。まだ届いていないが、懐かしい名前に心惹かれて、そういえば、憧れの妹尾氏は今どうしているかとネットで検索してみた。そしたらば・・・

 氏のホームページはすぐにヒットしたが、あろうことか彼は昨年の12月に急逝していたのだった。奥様と思われる方がコメントされていた。


妹尾隆一郎が、12月17日午後10時11分に旅立ちました。

あちらでのライブのお誘いを受けたのでしょうか。あまりにも急いで逝ってしまいました。

生前、Weeping Harp Senoh を応援して下さいまして心より感謝申し上げます。

2017年12月20日 妻 妹尾 菊江

                                 とあった。

 
 言葉もない。

 我は不思議に、突然あるミュージシャンが気になるときがあって、それであちこち調べてみると、たいていその方はつい少し前に亡くなられていることが多い。若林純夫さんもそうであったし、いつだって手遅れというか、ほんの少し遅れて常に間に合わない。
 今回もその訃報は知らなかったし、今こうして偶然ヤフオクでDVDを手に入れようとしてこの事実をやっと知ったのだ。
 お元気であれば、連絡とって、さこ大介さんたちに組ませて本格的ブルースナイトの企画も立てられたかと今にして思う。
 残念でならない。彼はさこさんと同い年ではないのか。天国であの唯一無比のハープを響かせて天使たちの度肝を抜いてやってくれ。
 ご冥福を祈る。Weeping Harp Senoh の魂よ、安らかれ。

https://sites.google.com/view/skikue/ 氏の公式サイト