デストロイヤーというひとつの時代の分水嶺2019年03月08日 22時49分16秒

★ある世代の男子は誰もが知っている男の死

 デストロイヤーさんが亡くなった。と、夜のNHKニュースが報じていた。彼の死の年齢について何も思うこと等はないが、「ボブ・ディランさん」もそうだが、~さんと、「さん付け」されてキャスターに呼ばれると、そういうふうに世間一般でも広く認知されている存在なのだとわかって少し不思議な気持ちになる。
 デストロイヤーはデストロイヤー、我らが世代には白い覆面魔王であり、必殺四の字固めである。まあ、その訃報に驚きはしない。何しろあの力道山とも死闘をくり広げた世代なのだから。

 しかしふと思う。果たして今の人たち、平成生まれもだが、おそらく四十代でもその名をご存知の人は少ないのではないか。
 むろんリングを離れても、何故か日本テレビのバラエティ番組で、ゴッドねえちゃんこと、和田アキ子らと共に、笑いをとっていた人だからそうした姿は記憶している人もいるだろうが。
 ニュースでは、かなり初老の人たち、男性中心にマイクを向けて皆一様に訃報に驚いていたが、今の人たちにとっては誰それ??だと思う。

 今の子はどうか知らないが、昔の子は、男の子の憧れは、プロレスラーか野球選手であり、女の子は、バレリーナかスチュワーデスと決まっていた。
 こんな我でも、唯一好きなスポーツは、プロレスであり、祖父と共に、大昔の日本プロレス、つまり力道山の試合をテレビで生前から観ていた。
 さすがに力さんとの試合ははっきり記憶にはないが、ジャイアント馬場との試合は、鉄の爪エリックやボボ・ブラジルらと共に今もありありと思い出す。体は大きくないが、圧倒的凄みがあった。それは覆面という正体のわからなさも大きい。彼唯一の得意技、四の字固めが決まれば誰もがギブアップするしかなかった。まさに一芸必殺である。
 昔の男子でデストロイヤーを知らない奴は誰一人いなかった。悪役でありながらその強さに憧れた。

 我にとって昭和の三大ヒールは、※ヒールというのは、「悪役」のことで、吸血鬼・フレッド・プラッシーと黒い呪術師・アブドラ・ザ・ブッチャー、そして覆面魔王デストロイヤーだと断言する。
 昔の男の子たちは、体育の授業の折など、マットさえあれば、すぐさま誰もが足四の字固めのかけっこをよくしたものだった。そしてそれはカンタンだが、きまるとじっさい実に痛い。
 猪木のコブラツイストとか卍固めという技も、皆でやってみるのだが、はっきりいってこれはなかなかきまらない。きまらないといのは、その技はあくまでもリングの中で、相手がそれを受けて、技にかかってくれる、受けてくれるから「きまる」技だということで、実際にやってみると、プロレス的了解のうえでのただの見せ技だとわかってくる。

 むろんバックドロップとか、ブレンバスター、ジャーマンスープレックスホールドなど大技は、やろうと思ってもやれないし、危険すぎてやるべきではないと子供心にも皆了解していたから、やりはしない。だからこそデスロイヤーの四の字固めである。ごくカンタンだが、じっさいにプロレス的にその痛みを実体験できるのである。なんちゃってプロレスラーに誰もがなれるわけだ。それは素晴らしいことではないか。
 今思えば、それは関節技の一種ととらえるべきなのだと思うが、デストロイヤーといえば、白覆面、そして四の字固め、という必殺技のレスラーとしてまさに一世を風靡した。

 本場米国でも実績を残している人だが、その後も大の親日家として、日本に拠点を移し、縁深い日テレのそのバラエティー番組で、コメディアンとしてもお茶の間に広く浸透した。和田アキ子の手下に成り下がっても、必殺四の字固めは健在で、「いじめ」ではなく本気で若手タレントに仕掛けては笑いをとっていた。
 今にしては実に懐かしい。本名ディック・ベイヤー、体は大きくなかったが、覆面レスラーの鼻祖であり、足四の字固め、フィギィア・フォー・レッグロックという一芸だけで、日米の頂点に上り詰めた男。昭和という時代を思い出し語るときに欠かせない人だった。

 君はデストロイヤーを知っているか。四の字固めができるか。それだけである世代、一つの時代の分水嶺となる男がまた一人死んだ。

コメント

_ 野良ぶた ― 2019/03/10 10時06分57秒

リンゴを握りつぶすフリッツ・フォン・エリック、耳をそいだキラー・コワルスキー、オーバーオールのヘイスタック・カルホーン、かなヤスリで歯を研いだフレッド・ブラッシー、無毛症のスカル・マーフィー、BBことボボ・ブラジル、そして鉄人ルー・テーズ。マスカラスやシンやアンドレが出てくる前の、今思えばやや胡散臭い外国人レスラーたち。

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