嗚呼、ショーケン死す2019年03月29日 08時14分32秒

★また一人、昭和を駆け抜けた男が、平成の終わりとともに昭和を抱きかかえながら逝ってしまった。

 先に亡くなった橋本治のエッセイに、昭和の終わりに手塚治虫らその時代を代表する著名人が次々と軌を一にするかのように死んでいったことにふれて、一つの元号というものが終わるとき、一つの時代終焉として多くの人が「合わせて」死んでいくことが記してあった。
 今、読み返して確認してないのでその趣旨ははっきり思い出せないが、確かにそうしたことはあると思う。
 元号にそういう『魔力」があるのではない。ただ、人の無意識的深層共有意識が、時代に密着した人こそ強く働き、新時代を前に魂が去り際を悟るのではないだろうか。
 死んだわけではないが、イチローの現役引退もまた、平成を代表する人だけに、改元もまた彼の中で何らかの引き金になっているような気がする。場は米国であれ、彼は厳然たる古武士的日本人なのだから。

 そんなわけで、我は、新元号を前にして「かけこみ」的にまだ誰か「大物」が亡くなるだろうと予測していた。ただ、それは、平成に活躍した人と限らない。
 平成はたかが30年しかないわけで、言わば一世代である。それでは生まれて来た人もやっと成人して世に出て社会でいっぱしになり、結婚したりするぐらいのことで、その人は何か成し終えるところまでいかない。
 けっきょく平成の終わりに死ぬのは、その前の時代、昭和に生きて仕事を成した人であり、裕也さんも希林さんもだが、あくまでも「昭和」の人であろう。
 我もまた昭和に生まれ生きて、人生の半分、もっとも多感な時代を昭和に生きた者として、では次は誰が・・・と考えていたら、まさかよもやのショーケンこと萩原健一の訃報である。

 人の死とは、常に誰であれショックなことで、何とも名状しがたいやるせなさ、憂鬱ともいうべき心境をもたらすものだが、ショーケンの突然の死の報は、まさに我の中で大きく重く圧し掛かってきている。
 彼個人が好きだったとか、ファン、アイドルだったとかいうわけではない。ただ、若い頃の彼はともかくカッコよくて、特に代表作のテレビドラマ『傷だらけの天使』(1974年)には、多くの若者たちが彼のすべてに夢中になった。我の周りにもああしたチンピラ的若造のくせにブランドスーツを着込むスタイルを真似る者が続出した。当時の若者たちにはまぎれもないヒーローだったのだ。

 我にとって、ショーケンというと、あの探偵事務所のパシリ、オサムとアキラのコンピの兄貴であり、今や人気俳優として大成した水谷豊にとってはまさに黒歴史でしかないと思うが、彼など今も、我にはその兄貴を慕う情けない弟分でしかない。『相棒』での頭の切れる嫌味な役所よりよほど人間味があり実にいい味だしていて名演である。ドラマの中の二人の関係は今も懐かしく思い出すとつい頬が緩む。

 その二人の若造をあこぎにこき使うドライなマダム岸田今日子とその執事的役でヒステリックな上司の岸田森というキャスティングも抜群で、毎回奇天烈破天荒な事件が起きて二人を手痛く翻弄させるも何とかコトは収まる。まったく予想がつかない展開に深く魅了された。最後ドラマは哀しい顛末を迎えるわけだが、ともかく毎回ものすごく面白かった。今思えば新進気鋭の脚本家が競い合いそれぞれ好き勝手に撮っていたのだからあんなアナーキーなドラマが作れたのだと気づく。
 ※余談だが矢作俊彦の小説で、この主人公オサムのその後を描いたストーリーがある。ファンにとっては感涙物の後日談である。それぐらい多くの人にこのドラマは強い印象を残している。★矢作俊彦著『傷だらけの天使、魔都に天使のハンマーを』

 もし大好きなテレビドラマをもし三本挙げろと言われたら、この『傷だらけの天使』と渥美清版『泣いてたまるか』、それに『北の国から』のごく最初の頃のだろうか。そのドラマの中の「彼ら」は今も、我の中で永遠に、泣き笑いし懸命に生き続けている。

 我にとってのショーケンとは、いつまでもこのドラマの中の主人公の若者であり、むろん他にもドラマや映画でいくつも好演は残しているけれどもその印象は圧倒的なものがあった。ある意味、その時代の若者の感情、不安、屈託したもの、粋がるもの、情けなさ、苛立ち、そして怒り、憤懣のようなものをギラギラとブラウン管の中で爆発させていたのだ。

 彼の出自のグループサウンズ、テンプターズのことも書き記しておきたいし、シンガーとしての彼のことも、結局、彼は何故、後年は仕事が少なく俳優として活躍の場を減らしたのかも思うところはある。
 が、31日のコンサートを控えて、我は今はともかく忙しくその時間がとれない。新元号が発表されてからとなってしまうかもしれないが、『探偵物語』での松田優作のこともからめて機あらば書き足したいと思っている。

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