無理を通せば・・・コロナが広がる2021年08月10日 15時09分37秒

★五輪開催と感染対策の二兎を追った菅内閣を憂う

 東京オリンピックがともかく終わった。もう連日、テレビはどこつけても試合中継、感動と興奮の(報道陣側の)大歓声、そんな喧さいお祭り騒ぎを聞かなくてすむのが何より有難い。
 中でもNHKには、視聴者、つまり受信料払う側の選択の余地を奪う権利があるのだろうか。特にEテレにおいては通常番組の放送を求める人たちがたくさんいるはずなのに。本来オリンピックは「特番」なのだから「別枠」としてNHKにはいくつもある空いてるチャンネルで流せば良いと思うのだが・・・。
 さておき、このコロナ禍の「緊急事態宣言」下、多くの国民、医療関係者の不安と危惧を無視して菅政権は無理やり強行した東京五輪、終わってみると国民感情としては存外「好評」のようである。
 自民党の御用新聞、讀賣によると、五輪開催は「よかった」という人は64%、菅内閣の支持率も過去最低とはいえ35%だそうで、バッハ会長のほくそ笑む顔が目に浮かぶ。※ちなみに他の報道機関の調査では政権支持率はもっと低く、軒並み20%台に落ちてしまっている。

 果たして、首相がひたすら念仏のように口にしてきた、「安全安心な大会」に本当になったのかは、各国選手が帰国して数週間過ぎないとはっきりしてこないだろうが、まずは会期中は大きなトラブルはなく終了したと言えるかと思う。※開会式も閉会式もサイテーであったけれども。
 だからと言って、開催して良かったなどと我は1%だって思わない。オリンピックは無事終わったとしても、バブルの外の世界、街中は感染爆発で連日過去最多の新規感染者数を日々更新し、まさに医療崩壊寸前の危機的状況となってしまった。

 菅首相は、ワクチン接種に加速度つければ、五輪開催期間にはコロナ感染者も減少に転じて、有観客でも開催可能と甘く考えていたらしいが、結果として、無観客でありながらもコロナ感染史上最高のメダルラッシュとなってしまった。
 首相を筆頭に、五輪開催と感染者増加は関係ない、変異ウイルスに加えて元々開催前から増えていたのだから、という論調が見られるが、五輪開催が直の感染爆発の原因とならぬとも、大きなきっかけ、「引き金」となったことは間違いないだろう。
 いくら大臣や都知事が感染防止策として「不要不急の外出、移動」は控えてと繰り返し叫ぼうが、(尾身会長曰く)本来は開催はありえない「緊急事態宣言」中での、世界各国から大勢の人が集まる五輪という「お祭り」イベントを開催してしまえば、何故に都民、国民だけがさらにまた「自粛」しないとならないのか!?と誰だって疑問に思う。

 何故に、そんな緊急事態のさなかに、オリンピックだけは別枠で、何が何でも開催しないとならなかったのか、菅首相は最後までその理由をきちんと説明しなかった。「復興五輪」から「人類がコロナに勝った証証」、さらには挙句に「緊急事態宣言下でも開催できることを世界に示したい」まで「開催目的」は転々として、ただひたすら安全安心な大会を目指すということと、国民の命と健康を守る、という文言だけが壊れたテープレコーダーのように彼の口から繰り返されるだけだった。

 で、どうなったのか、だ。大会自体は仮に「安全安心」の裡に終わったとしても国民の「命と健康」は、結果として後回し、おざなりにされてこの感染爆発と医療崩壊の危機である。
 菅首相は、9日の会見で、「ようやく開催国の責任を果たせた。たくさんの選手から感動をもらった。素晴らしい大会になった」と自画自賛の総括を語ったそうだが、この期間に新たに感染した国民とてんてこまいの医療関係者、現場で働く人たちに対しては何のお詫びどころか、かける言葉もなかった。

 古人曰く、二兎を追うものは一兎も得ず、であり、無理を通せば道理が引っ込む、のである。
 仮に、五輪開催は「よかった」「成功」だったとして、一兎は何とか得たとしても国民多くに感染爆発、医療崩壊、在宅療養死を強いたのでは、いくらメダルの数が増えたとしてもそれで「了」とはできるはずもない。メダルの数と国民の命のどちらが重いかは比べるまでもない。
 およそ八割の国民が、反日であるはずもなく、皆心からこのコロナ禍での開催に不安に思い、再延期もしくは中止を望んだのに、菅首相とその取り巻きは、反対の声を一切無視して「強行」してしまった。
 まさに無理を通した結果、いまの連日最悪、過去最多の感染者数記録更新中という状況を招いたのだ。しかも対策は毎度の三密避けての自粛お願いと相変わらずのワクチン接種頼みだけなのだからこの先、いったいどうなってしまうのか、この国は・・・。

 ロックダウンとかの是非はともかく、この東京五輪をできるだけ早く「中止」としてしまえば、もっと強い感染防止対策はとれたはずだし、国民の側の危機意識も高まったはずだ。
 そう、何がなんでも五輪開催ありきという「無理を通した」。結果、『無理を通せば「爆発的に」コロナが広がる』、ことになったのだ。