特別なことだが、誰にでも必ず起こる、ごく当たり前のこと2022年08月25日 17時39分49秒

★母の死から七年目の夏の終わりに

 父がコロナ感染・発熱で専門病院に搬送されて以後一か月が過ぎた。それが7月21日のことで、当初我は、気楽に、コロナが治ればまた再び父はこの家に戻れる、そしてまた再びこれまでの日常が続いていくと安易に考えていた。
 が、コロナ自体は、幸いにして10日間の入院で癒えたものの、その間の入院生活で父は心身の衰弱が進み、このまま家に帰って来ても元の生活は難しいだろうと、別のリハビリ&療養型専門の系列病院へと転院を勧められた。
 口からも食べることがなかなか難しくなっているのと、長引くベッド上の生活で、コロナ禍中のため我も面会が一切できず、刺激がなく認知症も進んでしまい意識もはっきりせず、結局今は点滴だけで命を保っている、という状態になってしまった。
 そして先にも記したが、8月12日、担当医から呼び出しがあり、父の余命は、今月30日頃までかも、と宣告されてしまったという次第だ。

 この一か月間、常に携帯電話を持ち歩き、昼夜傍らに置き、「もしも」の事態に備え、電話がいつあるかと常に気持ちを傾注していた。
 幸い、今日の現時点では、まだ有難くも父はこの世に在る。そして実は、一昨日23日午後のこと、我は東京に住んでいる父の孫、我の甥っ子と共に、父の見舞い、面会に行ってきた。
 前日、病院から電話があり、特別に短時間だが、面会は許可する、と伝えられ、即、明日行くことにしたのだった。
 そしてその甥っ子に電話かけたら、彼も普段は超多忙なアニメ業界の人なのだが、幸いにして一仕事終わったところで、その日なら時間の都合がつくと良い返事があり、息子と孫の二人して、暑さがまたぶり返した夏日だったが、生きている我が父と面会できたのだった。
 まさに神の善きはからい、と思うしかないのだが、要するにそれだけ父の死が迫り来て、病院側として気をきかせて特別に許可してくれたということだろう。
 
 病床の父は、確かにまたさらに痩せて、意識もはっきりしない状態であったが、完全な昏睡状態ではなく、こちらの声かけや手を握り揺すると、目は開けなかったが、口を少し動かして何らかの意思表示を示してくれたようであった。
 こちらの贔屓目かもしれないが、行った時よりも別れ際は顔色も良くなり、穏やかな落ち着いた顔つきになった気がした。つまり、彼の意識には我らが来たことも声かけもこちらの思いも伝わったのだと信じたい。
 帰路その甥っ子と軽く食事して話したが、ともかくまだ生きてこの世に在る父と、彼にとっては祖父と、もう一度会えたことはまさに僥倖だった、運よく今日行けて良かったと喜びを語り合えた。

 そう、コロナ禍で面会さえも禁止されて、もうこのまま父と会えるのは遺体となったときなのかと、暗澹たる気分でこのところずっといた。
 今もまだ父が奇跡的に回復して再び短時間でも意識が戻り、我が家に一日でも帰らすことができればと日々神に祈るが、それは神と父自身の意思であり、ならば全ては神の御心に委ねるしかない。
 ただ、我は、その死が避けられないとしても、せめて一度は生きている父と会い、我の愚かさをまず詫びて彼の人生を慰労し感謝の気持ちを伝えたいと心から願っていたから、その思いは果たせたわけで、有難いことだと深くただ感謝している。

 ようやくこれで気持ちも一段落というか、一区切りついた。タイトルに書いた、特別なことだが、誰にでも必ずいつか起こる、ごく当たり前のこと、つまり「死」に対して、ことさらに脅え悩み畏怖するのではなく、起こるべくして起きることとして気持ちを整理していこう。

 母が死んだのは、2016年の9月8日であった。その日、その年から奇しくもちょうど7年目、しかも季節も近しい。
 居間の壁には、その年2016年の、12か月が載っている一枚の大判カレンダーが今も貼ってある。当然だが、週の曜日回りもその年と今年は全く同じである。
 九州在の我の唯一の妹は、父の容態を伝えたらば、ともかく仲が良かった夫婦だったから、その母の命日頃に母が迎えに来て逝くのではないか、と言ってたが、それもあながち迷信ではなく有り得ることと思えてきた。
 呆けて足腰も衰弱した父も母に手を引かれれば無事にあの世に行けると思うと泣けてきた。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://masdart.asablo.jp/blog/2022/08/25/9520725/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。