選択肢がないことと「支持」は違うはずだ。2016年02月05日 22時24分22秒

★安倍内閣の支持率上がっていることについて思う。      アクセスランキング: 108位

 このところ各種の世論調査で、安倍内閣の支持率が上がっている。甘利氏の閣僚辞任という不祥事があったのにも関わらず実に不思議である。景気回復の実感も未だ大多数の人は持たないのにも関わらず、安倍内閣、アベノミクスを支持するのはまさに不可解というしかない。
しかし、その理由にはわけがある。それに関連して考えたことを書こう。

 先日のこと、我が市のガス会社から通知のお知らせが届いた。プロパンではなく、各個の家ごとに配管している、都市ガス会社である。
 それには、「電気の販売をはじめます」と大きく見出しがあり、「●●ガスでは、都市ガス、プロパンガスの販売に加えて、一般のご家庭向けに電気のサービスを開始する準備をすすめています。お得な新サービスにご期待ください」と今後、電力の自由化で、その会社も電気販売事業に参入する旨が書かれていた。

 やったあ~と思った。これで東電、東京電力を利用しないですむ。今までは、原発をなくしていくどころか、再稼働を今もなお進めている東京電力に対して、何度も本社前で抗議の声を挙げつつも、無力感を強く感じていた。いくら抗議しても、東京、関東近郊の住民は我も含めてけっきょく東電から電気を買い、東電はその中から原発関連にも予算を組んでいく。株主となって、そうした事業方針の撤回を迫る以外に、じっさいのところ電気は生活に必須だから使わざるえないゆえ東電を利用しないとならないという矛盾した状況がずっと続いていた。ある意味、原発の廃炉を強く求めながら、それに全く応じない東電を我らは支えていたのである。
 むろんのこと、太陽光他の手段で、東電をまったく利用せずとも生活している人は現実にいて、先日もお会いしたが、我家の場合、それに憧れるものの電気の消費量=生活の規模が大きすぎて今はまだ不可能だった。

 しかし、こうして電力の自由化で、我の住む町でも東電以外のオルタナティブな電力会社が選べそちらから電気を買えることとならば、もういやいや東電を利用することはない。それこそ、東電との契約を打ち切るときに、はっきりと、原発を稼働、建設や維持し続ける間は、今後とも絶対に東電は利用しない、と意思を表明するつもりでいる。
 そのようにして、今原発に反対している人たち全員が、はっきりと東電に抗議の意思としての利用中止を告げて行けば、やがては、東電側としても彼らのビジネスに支障が出るならばと、原発推進という社是を変えざる得なくなるかもしれない。むろんそんなことは半国営的巨大企業には蟷螂の斧でしかなく、何も変わらないかもとも思う。
 が、どんなことでも、我々は利用者、生活者としてまず悪しき企業とは関係を断ち、絶対に利用しない、その社の製品は購入しないなど結果として支援しないというスタンスを示していくしか道はない。
 原発には反対だが、東電は利用するという、我々のジレンマ的矛盾をさんざん右翼たちからは批判されてきたが、これならば終始一貫している。東電はもう絶対利用しない。そしてその理由をはっきり彼らに伝えていく。

 と、何でこんなことをまず書いたか。実は、安倍内閣の支持率というのもこの、今までの電力事情と同じなのである。この史上最凶内閣を支持する理由として今もかつても一番多いのは、政策が信頼できるからではなく、「他の内閣より良さそうだから」であって、要するに選択肢がないゆえ、失点もなければ支持するしかないか、という消極的なものでしかない。

 先の東電の例をひいて言えば、我は東電の経営方針を支持してきたわけでは絶対ない。が、東電を利用してきたのは、他に選択肢がなく、仕方なく嫌々だが利用してきたに過ぎない。
 それと同様に、残念なことに今の日本の政治状況では、多くの人にとっては、自公政権にとって代わる、よりマシな政権がないのである。国民はいったんは民主党に政治を託した。が、その結果がどうなったかは今も手痛い心の傷としてずっと残っている。
 現実の話、弱小野党がパラパラなまま乱立している限り、他の内閣という概念自体が成り立たないし想定もかなわない。となれば選択肢がない故に、今あるそれを支持するしかないと考える人は当然多い。

 しかし、こんな支持率は当然ながら実態を伴っていない。彼らがどれほど巨悪でとんでもないことを考えているか、これまでしてきたかは明白なのである。ただ、多くの日本人は目先の景気だけに囚われて、日銀総裁言うところの、今はまあ、景気は回復基調にある(と思われる)ならば、他の選択肢がないゆえ、彼らを支持するしかないではないか。

 こんな支持率上昇は何も怖れることはない。じっさいに景気は回復したとしても庶民の懐に入る金は減り続けていくし、株が上がろうと下がろうと一切それは変わらないではないか。
 繰り返す。そもそも選択肢がないことと「支持」は違うはずだと。
そして何より問題なのは、そのもう一つの選択肢、オルタナティブなそれを野党がバラバラで示せないで今もいることなのだ。
 国民の多くは実は、真に民主的な、一般大衆の願いが通るまっとうな政治、政権を常に望んでいる。だが、その期待は民主党に託したが見事に裏切られた。そして今もその党内には、野田氏や前原氏、長島氏のような、自らの保身しか頭にない、国民そっちのけの身勝手な政治屋がデカい顔して、野党の結集に背を向け足を引っ張っているのである。それでは、いつまでたっても政権選択肢はなく、国民は仕方なく自公政治を支持してしまうだろう。