憲法を変えるにゃナチスに学べと三代目2013年08月02日 09時19分30秒

★改憲派の「本音」がまたもやポロっと出た。現在のアクセスランキング: 114位

 これはもう失言、誤解の範疇ですまされる事態ではないと思う。内閣副総理、麻生太郎氏の「ナチスに学べ」発言である。

 あの櫻井よしこ女史を座長とする右派シンポジウムで語った内容だとしてもこれはあまりにひどい発言であり、すぐさま近隣アジア諸国のみならず米国ユダヤ人権団体、西欧諸国と内外、世界中から糾弾、批判された。

 麻生氏はその大騒ぎを見てすぐさま「失言」であり真意は誤解されたと撤回した。彼はいう、「喧騒にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげた。私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかだ。ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい」とナチス肯定発言の火消しに大わらわである。

 だが、彼の今回の発言は報道された発言要旨の文面を読む限り自分にはどう考えても「ナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえている」とは読み取れない。

 その場の話の流れがわからないので断言すべきではないと考えるが、報道される限りにおいて麻生氏はこう語っている。

 「ドイツのヒトラーは、民主主義により、きちんとした議会で多数を握って出てきた。選挙で選ばれた。ドイツ国民はヒトラーを選んだ。ワイマール憲法という当時ヨーロッパでもっとも進んだ憲法下で出てきた。憲法が良くてもそういったことはありえる」。 さらに靖国神社参拝で諸外国が騒ぐのははマスコミのせいだとして、「憲法の話を狂騒の中でやってほしくない」と、「ワイマール憲法もある日気が付いたらばいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうかね。みんな納得してあの憲法は変わっているから。僕は民主主義を否定するつもりもまったくないが喧噪の中で決めないでほしい」と語ったと記録されている。

 文脈を読む限りどこがナチスを「極めて否定的」にとらえているのだろうか。誰が読んでもこの発言は額面通りに、憲法を変えるのは、(国民の)誰にも気づかれないようナチスのやった「手口」に学ぶべきだと言っているではないのか。そこにはナチスを否定するどころか評価しているではないか。

 じっさいにナチスがやった手法、つまり「手口」は、強権と謀略でまんまと憲法を変えたのであって、決して「いつの間にか、誰も気がつかない間に変わった」のではないことは多少の近代西洋史を学んだ者ならだれでも知っている。が、そんなことはともかく、彼はナチスに学んで日本でも国民的議論が高まらないうちに、「いつの間にか」「誰も気がつかないうちに」粛々と憲法を変えたらどうか、と言ったのである。これが単なる一政治家の失言ではなく、それも日本国副総理による世界的影響を及ぼす大きな「問題発言」なのは海外の報道で歴然としている。失言と撤回ではもはやすまされない。

 このナチスに学べ発言には、当然のことながら野党のみならず与党内公明や自民党内からも批判する声が上がっていた。それが常識、良識ある政治家の示す態度であろう。ところが唯一彼を擁護する政治家もいた。維新の会代表、問題発言の先達橋下大阪市長である。彼は「ナチスドイツを正当化した発言では決してない。国語力があれば、すぐわかる」と市内の記者団に答え「かなり行き過ぎた、ちょっと度のきついブラックジョークというところもあるのではないか」として「憲法改正論議を心してやらなければいけないという趣旨だったのではないか」と全面的に麻生氏を擁護している。

 例によって彼特有の表現で「(ナチスを正当化しての発言でないことは)国語力があれば、すぐわかる」と決めつけているが、マス坊もこれでも物書きの端くれとして国語力は多少はあるつもりでいたが、ちっともわからない。麻生氏はナチスに学べと言っている。ナチスを評価しているとも読める。俺はバカなのかなのか。これをブラックジョークだと捉えられる橋下氏の国語力を疑ってしまうのは俺一人か。海外に向けて臆面なく「ブラックジョークでした」と言えるのか。西欧ではナチスに関してはブラックジョークですら題材にするに憚れることを知らないのか。

 先の橋下氏の「従軍慰安婦容認」発言も同じだが、こうした無見識な政治家による暴論、失言、それも国政に大きく関与する立場の要人の問題発言はどれほど世界に「日本発」として悪影響を及ぼすか彼らは考えないのであろうか。愚かでありうかつすぎると考えるのは憲法改定論者だって同感であろう。橋下氏に至っては取り消すどころか、今もマスコミによる誤報だと言い張っている。

 こうした愚か者たちが日本国憲法を変えたいと願っているのである。先の石破氏による「国防軍創設時には、軍事法廷において命令に従わない者は死刑」発言もだが、いったい彼らは憲法を変えてどんな国にしたいのかそれは今だってみえてくるではないか。

 麻生氏はよく知られるように吉田茂元首相の孫である。吉田茂については毀誉褒貶あれこれ言われているが、少なくとも終戦処理と戦後復興に大きく尽力した平和主義者であったという側面もよく語られる。
 現在の日本国憲法には、時の内閣総理兼外務大臣 吉田茂 と以下、各大臣14名の名が連署されている。ある意味、麻生氏の祖父である吉田茂氏こそ平和憲法の生みの親なのである。

 麻生氏がその祖父を思い、憲法改定反対の論を張るならば理解もできる。ところが、よりによって憲法を変えるには誰も気づかないうちに、ナチスドイツの手法に学めばよいと言ったのである。何たる孫であろうか。

 タイトルの「憲法を変えるにゃナチスに学べと三代目」であるが、お分かりの通り、「売り家と唐様で書く三代目」という江戸川柳のもじりである。
 
 初代が苦心して財産を残しても、3代目にもなると没落してついに家を売りに出すようになるが、その売り家札の筆跡は唐様でしゃれている。遊芸にふけって、商いの道をないがしろにする孫を揶揄しての歌である。継いだ政治家の道を失言と放言、問題発言でないがしろにし祖父が築いた日本国憲法と平和主義をナチスに倣って改定、否定するとはいつの時代も三代目なのだと呆れはてる。さぞや土の下の吉田茂も嘆いていることであろう。

 もう政治のことは書きたくない気持ちでいたが、どうしてこの発言が見過ごされようか。
 ♪あ~あ~やんなっちゃった。あんがあんがあんが驚いた~。