人は皆生きているだけで何とかやっと2012年02月09日 21時14分20秒

★どこも皆大変なのである。

 今日は朝から明るく晴れて久々のぽかぽか陽気であった。私的には「社員」である友人を招いて、拙宅の一階廊下の壁塗りやら老親用手すり付け、それに薪ストーブ用薪割りの作業をした。それもまた3.24に向けての下準備でもある。

 21世紀のこのところ、友人知人間の連絡・通信は、年始の年賀状を除けば、ほぼすべてメールになってしまっている。むろん、ごく近しい仲間内は未だ携帯での連絡やりとりはしているが、近況報告的な急を要しないお伺いは、たぶん誰もが皆電子メールで行っていめのではないだろうか。昔なら郵便でやっていたことが、今は携帯やパソコンに取って代わってしまった時代だからであろう。

 そうして、こちらから何らかの近況報告も交えたメールを送り、向こうからも何らか返信が届く。が、中には、こちらからのメールもスパム扱いとされてしまうのか、一切何の音沙汰もない人も多々ある。それもまた21世紀的だなあと思えるが。つまるところ、メールでの「手紙」としての役割は当然ながら、紙のハガキや封書に比べて電子メールではさして価値を持たないのであろう。簡便さというものは、やはりそれしかの価値、つまり重さを持たないということなのであろうか。多勢のスパムの中に大事な手紙も埋もれていくのもまた仕方ないことなのかと思える。自分はとても大切な恋人にラブレターを送るとしたら怖くてメールは使えない。どうしても郵便の封書としたいが、今の若者達はどうなんだろうか。

 さて、そうした感慨はともかく、当方に少ないけれど届く、返ってくる手紙(メール)はこのところ皆あまり元気ではない。決して暗いということではなくても皆それぞれの大変さが切々と記されていて、うーむと思ってしまう。それはそのメール自体の良し悪しではまったくない。
 まあ、今とてもすっごくハッピーで、浮かれている人はメールでそんなことは知らせてこないだろうし、またそれこそそんなメールが来ても不快になるだけかとも思うが、他者の現況を知るにつけ、自分も大変だと思ってはいたが、皆誰もがそれぞれ今大変な状況なのだと気づかされるばかりである。

 仕事の悩みもあろう、人間関係のことも。そこに生活の困難さ、そして家庭家族の問題も抱えてる人もいる、あるいは自ら、または家族の体調不良、病気のこともある。何気なくふれてあるメールの行間から、自分が今大変だと大さわぎしていること以上の辛苦が感じ取られて、ああ、誰もがそれぞれの大変な問題を抱えて何とかがんばって生きているのだと窺い知れる。
 情けないことは、だからといって、人のふり見て、自分は大したことないとなど気を取り直し元気になるはずもなく、そのみんなの大変さを知りまたさらに気持ちも沈んでしまうことである。でも皆で落ち込んで元気をなくしても仕方あるまい。

 長く生きていれば人生は楽になるかというとそんなことはあまりなく、まあ、知人には子育ても終えて年金生活で悠々自適で、海外旅行とか趣味に邁進し日々毎日を楽しく面白おかしく生きているように傍から見える人もいなくはないが、自分の身近な仲間達は皆、どうしてか今かなり大変のようである。若い人は若いなりに仕事やら生活やら先行きのことに追われているし、同世代は皆老親のことやら、自らの体調不安、少なくなってきた仕事のことや、老い先についての不安の対応と準備に追われている。

 歳をとって楽になり安定できるというのはほんの一部の恵まれた人たちだけで、皆若いときとは別な切実な切羽詰ったような気持ちで目先の問題を抱えているのである。若いときももちろん大変だが、若さゆえの楽天感と体力も将来の可能性もありえた。歳をとるとそうしたプラス思考のタネがなくなり先行き暗澹たる「現実」だけがひしひしと立ち塞がってくるのである。

 ゆえに、ある意味誰もが、生きているだけで何とかやっと、というのが一番適切な表現、気持ちだと思える。そう、自分もまた。このところふと「死」を思うが、すぐにまたこう思う。「今はまだ死ぬに死ねない」と。
だが、だからといってそこで落ち込んでいても仕方あるまい。何とか今生きているだけでやっとだからこそ、余裕がないからこそ、そこで留まっていても仕方ない。

 皆それぞれの大変さを抱えて生きている。それは未来永劫続くものでもないかわりに、決してすぐに楽になるものではない。焦ってみても慌てても天を仰いで嘆いても仕方ない。投げ出したく逃げ出したくなってもどこへも逃げ道はない。

 ここでもないどこかなんてどこにもない。そしてそのどうしようもないところ「どん底」からほんとうのこと、確かな真実が見えてくる。それこそが「うた」なのだと自分は信じている。どん底から逃げることを考えるのではなく、どん底をひしひしとみつめることから始めるべきではないのか。俺のどん底を大切にしていきたいと思う。