古本稼業再考・消えていくのは本だけではない・42012年09月20日 10時41分24秒

★本屋と古本屋の今後

 というわけで今の人は本を読まないから本は読まれない。

 潜在的な読書人口というものは決して今も少なくはないと信ずる。それは今だって芥川賞、直木賞の受賞者についてはマスコミも大きく取上げる人事であるし、いつの時代もそれなりの話題作、ベストセラーは次々と登場する。 人々はまだ「本」に関心がある。それなりに書き手、作家志望者の数は、ネット上を見ても星の数ほどいる。※インターネットと本は反目、競合するものではなく、今では本自体がネットに大きく依存している。ネット上からベストセラーも多々登場するし、ネットで話題にならない限り本は売れることはない。

 しかしそうした読書好きは中高年、自分も含めた主に50代以上の活字世代中心の話であり、今の20代、30代の携帯、ネット世代はまず本などはゲーム攻略本とコミックス以外読んだことはないのではないか。そして本好きは皆高齢化が急速に進んでいる。
 ならば本や雑誌は当然売れなくなり、必然的に市場は縮小し、やがてはほぼ新刊の類は電子書籍と化していく。それは時代の流れで致し方ない。音楽CDがファイル、データ化されてダウンロードされて売買されていくのと同じ流れである。つまり実体としてのモノはもはや不要で、読めれば聴ければそれで用を足すということだ。これはある意味地球にやさしい、環境に良いとも言える。
 文明というものは元に戻せない。また戦争や地球的天変地異で、電気も水道もない江戸の昔のような暮らしを強いられるときが来るかもしれないが、人類は一度覚えた技術と知識を繰ってすぐにまた復興、復旧することだろう。とにもかくにも本は消えていく。

 これからであるが、一度しか読むことのない、繰り返し読むに耐えない話題の文庫シリーズのようなベストセラーは、そもそも本などにする価値は少なく、電子書籍として流通していけば良いと考えるし本にすべき価値のある専門書や真に役立つ良書のみ本として出せば良いと思う。が、現実はその逆で、そうしたベストセラーとなる本こそ需要が見込まれ大量生産しても捌けて行くから本として存在し得る。
 逆に出すべき価値のある役立つ専門書のほうが、専門家、研究者などしかニーズがないから本としては出せなくなってくる。出すとしても採算を考えると一冊が5000円~ぐらいのラインとなってしまうだろう。今だってそうして二極化が進んでいる。私感だが、おそらくこれからも本としての価値のない本こそなくならずに新刊として出ることは間違いないが、出すべき価値のある良書は出したくても少数の読み手が求めてももう出なくなるかと思う。つまり採算が合わないのである。
 そうして本はなくなりはしないが、出版数も版元も少なくなり本屋はさらにどんどん消えていくだろう。

 以前、街の本屋の主人が語っていたことだが、本屋にとって雑誌はご飯、主食であり、今はその主食がコンビニで売られるようになってしまったから売り上げが激減してしまったと。さもありなんと思った。
 本というのは小規模の本屋ではさほど売れるものではない。話題作ならば多少動くだろうが、そもそも品数がそんなに置けない。探している本がある人は注文したりするし、実は主力は日々次々発行される雑誌、マンガ誌だったのである。儲けは当然少ないが薄利多売で本屋の主食であった。それが今では駅前のコンビニで人は弁当やペットボトル、スナック菓子と共に雑誌を買い求める。

 増坊の町にも昔は駅前を中心に各駅数件は本屋さんが存在していた。今では、市内全体で昔ながら続いている本屋はほんの2、3軒だけでほとんどの本屋はこの10年内で廃業してしまった。余談だがそれは酒屋も同じで、こうしたコンビにでも扱う商品の小売店はそちらに客層を奪われて経営が立ち行かなくなったのである。規制緩和の結果である。

 本屋が生き残るとしたら、郊外型のショッピングモールの中かそこに隣接した大型の書店、それも資金力のある書店チェーンの出店以外経営はまず難しい。そうした人が沢山来る場所にあって広く商品を揃えて何とか経営は成り立つ。昔ながらの街の小商いでは自宅でやっているならともかく店舗代だって払うだけの儲けは出ない。まあ今でもせいぜい動くのはゲームとアダルトとアニメ本、コミックスだけだからそうした店に特化していくしかない。じっさい立川に今もあるが、かつては民主的な左よりの本ばかし置いていた本屋が場外馬券売り場の前ということもあって、今ではアダルト専門書店になってしまった例などいくつもある。

 ならば古本屋はどうしていくか。あともう一回だけ書いてこの話終わりにしたい。書いていても気が滅入る。

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