まさに、自由と自堕落は紙一重であった。2024年04月19日 11時55分46秒

★金はないがまだ時間はある、身体もまだ動く

 《前回の補足》つまるところ、2016年秋の母の死後6年、我は父と二人だけで暮らしていたわけだが、その父がコロナ関連死で逝き、突然我は一人に置かれた。ほんとうの自由に、それまでの父の介護中心のルーティンから解き放たれたのだ。
 そして情けなくも今のこの惨状、苦境に至った。

 これは、向田邦子の謂いだそうだが、一人暮らしとは、『自由と自堕落は紙一重』だという名言は、まさに正鵠を得ているとつくづく今思える。
 つまり、誰にも気兼ねせず、他者の介入そのものがない故、自らのペースで何であろうと好き勝手にできる。
 が、同時に、他者の目や意見等がない分、どれほど部屋が散らかろうと身だしなみや生活がだらしなく崩れようと気にする必要はなくなる。
 自由と自堕落は、本来はまったく別の文脈で語られるべきことなのに、確かに気づけば我は、自由になった故に自堕落に陥ったのだ。

 父が生きていた時は、嫌でも介護関連で様々な他者が定期的に家に来るので、応対するために最低限の掃除や身だしなみの整えは必須であった。
 我は一人になって、一切の外との関わりが切れたとたん、徐々に生活は崩れていき面倒に思えることは全て後回しにして、日々まさにその日暮らしにだらしなく、ただ安逸を貪って刹那的に生きていた。
 むろんそこに鬱々とした心境、新たなライフスタイルに対しての戸惑いや混乱はあったと思う。ただ、最低限の、どうしてもやらねばならないこと、つまり動物たちの世話以外は、何故かすべて面倒になってしまい結果として自由は自堕落へと崩れ落ちて行ったのだと今わかる。

 先にも書いたが、増えすぎた猫たちをめぐるトラブルや、ご近所との諍いなど、自堕落が招いたトラブルも多々あった。その都度、鬱の度合いは深まり自死すら頭をよぎった。俺は、そんなに非道い人間なのかと問い直した。
 我の崩れよう、だらしなさに、かつての友人たちの多くが呆れ果て疎遠になるどころか、もう連絡してくるな、縁を切るとの通告さえあった。
 それもこれも自由という状態に甘えて、はき違えてしまいとことん自堕落に、自らを甘やかしてきたからだと今気づく。

 ともあれ、あれこれ今さら悔やんだり自らを責めても意味がない。時間は一秒たりとも戻せないし止めることはできないのだから、日々ともかくこれからも生きていくしかない。
 どうしようもない人生、咳しても一人、ならば、その一人の責任において最低限の当たり前のことを自らに課してやっていく。これ以上さらに酷く悪化しないよう律しながら。
 どうしようもない人生だが、これからは少しはマシになるよう、再びこの人生を自らのものに取り戻していく努力を精一杯やるしかない。

 テレビで先日見たが、昨今ひとり暮らしの高齢者だと、その住まいさえ見つけることがなかなか難しいそうだ。保証人も含め先行きのことを思うと、貸し渋りする大家も多いらしい。
 幸い我には、金はなくても親たちが残してくれたこの家、住まいはある。ゴミ屋敷と化して諸処の税金やあれこれ生活費はかかろうとも、ホームレスになる心配は今はない。誰にも気兼ねせず、とことん自由の上に住むところの心配はないのである。
 これはもしかしたらすごく恵まれた幸福な状況なのではないか。世にはもっと切羽詰まったギリギリの、明日生きて行くのも切実な人たちがたくさんいるのだから。

 我が人生がこの先どれほどあるのか、先行き何が起こるのか、それは誰にもわからない。しかし、老いてきたとはいえ、体調すぐれずともまだ何とか身体は動く。進行性の病にはかかっていない。
 自由なのだから時間はある意味いくらでもある。すべて自分勝手に好きなように配分できる。
 ならばモノや猫の多さを思うとき、いったい今後どうなるのか、前途多難というか先行き不安にもなってくるが、ともかくまずは今を生きること、今できることを一つづつ少しでも進めていくしかない。

 誰にも訪れる死、ゴールはもう見えてきている。あとはそこまでどれだけしっかりと自らの足で歩いていけるかだ。
 良い時もあれば悪い時もあろう。良い時は浮かれて崖から落ちないようにしないと。悪い時は自ら飛び降りないように。
 主は、こんな我をも見捨てじ、と祈るだけだ。

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