古本稼業再考~・まとめとして2012年09月22日 08時44分41秒

★「目に見えないもの」からこそ想像する力が生まれる。

 今日、秋分の日はずいぶん涼しい。半袖半ズボンの夏の格好でいると寒いぐらいだ。親たちも風邪ひかさぬよう気をつけねばならない。何だかんだ言っても確かに古人曰く「暑さ寒さも彼岸まで」だと感心する。

 今日は両国センターで中川五郎&スーマーのライブが夕方からあるのでたぶん顔出すつもりでいる。それまでにウチの作業などやるべきことが終わるかだが。行けるときは行くし行けない時は行けない。だから連絡はしていないしそれで良いと思っている。

 だらだらとりとめのないことを徒然なるままに書いてきたが、最後にどうしても書き記しておきたいことをまとめておく。

 世には、本=言葉を文字にして書き記したもの・小説・詩など、うたも含む音楽、絵画、マンガ、映画・テレビなど様々かつ多様な文化がある。それは芸術であり娯楽でもある。近年はそこに映像ゲームという新たなジャンルが加わった。これは映画に近しいものだが、自らがその世界に加わることができバーチャルな仮想人生を送るようなものだ。これら諸々の「文化」を二つに大別としたらどう分けるか。
 
 自分ならば、本と音楽とで一組、そして絵画・マンガ、映画(テレビも)、ゲームの組に分ける。お分かりのように、目に見えるものと目に見えないものである。文字に書かれた言葉は目では見える。が、実はそこに実体はない。人はその書かれた文字を読むことで頭の中でイメージして理解しているのである。音楽だって同じことで、目の文化でないことは言うまでもない。
 今もっとも危惧することは、目に見える文化はますます全盛だが、目に見えない文化、つまりイメージを喚起する文化は衰退の一方だということだ。それはゆっくり立ち止まって考える文化の劣化を指している。何のことか。

 初めに言葉ありき。言葉は意思伝達の手段から文字の発生と共に、伝えるべきこと、残しておくべきことを記録、伝承していくため「本」としてまとめられた。個々の言葉はそもそも記号でしかないが、仮に「古い木の机の上に青いリンゴがある」という一文があるとき、そこから浮かぶイメージは百人百通りである。
 「小説」でなくても文字に書かれた言葉を読むときに、人は頭の中でそのイメージを常に浮かべて目に見えない世界を脳内で作っていく。実はそのことこそ、思考、考えることであり、読書こそ最良の思考のトレーニングなのである。想像力の鍛錬なのだ。

 一方、映画や映像ゲームは、あまりにスピーディで、一度観はじめたら途中で本のようにいったん閉じて休むことはできない。映画はまだ見直しがきくが特にテレビがそうだ。常に一過性のものであり実に刹那的で、ゆっくり考えることは許されないメディアなのである。テレビがお茶の間に登場したとき「一億総白痴化」と喝破した大宅壮一の先見の明に脱帽する。映画はまだしもゲームやテレビにあるのは思考ではなく単に「反射」である。テレビの普及でそのシステムに飼いならされた人々はゆっくりと深く考えることがなくなってしまった。

 文明とは何か。考えるに、文明とは文化と芸術そのものであり、文化とは、知識と真理の継承と蓄積であろう。その知識の集大成である「本」が今消えていく。そして人々は「知識」をコンピュータに預けてしまっている。言うまでもなくそれはとてつもなく危険なことだ。拙ブログの読み手ならご理解頂けると信ずる。

 「知識」とは本来個人のものであり、本によって共有されるものであった。今深く憂うのは、モノが売れずに消えていくだけではなく、文化全体、中でも考える文化が衰退し消えていこうとしていることだ。考えない人々、想像力を失ってしまった人々はその時その時、わかりやすいこと、単純な発言に喝采の拍手を送る。曰く、中国の無法には武力で立ち向かえ、と言う発言を聞けばその通りだと短絡する。そこには戦争によって失われるすべての生き物に対しての想像力が欠けている。ゲーム世代にとって「戦い」とはモンスターハンティングのようなものとしか思っていない。命の重み、大切さは語り伝えられていくことはない。

 若者よ、今こそ、今だからこそ、書を持って街に出でよ。想像力を喚起する読書や音楽などの「考える文化」の復権を強く願ってこの稿をおく。

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