颱風19号、「まずまずの被害」では全然なかった。2019年10月15日 23時15分42秒

★二階氏の発言に思う

 寒くなった。体感ではもう季節は冬である。この寒さの中、被災し今も体育館などの仮設避難所にいる人たち、家はあってもライフラインなど整わないで苦労されている方々はどれほど大変かと思う。屋根が飛ばされ、今もビニールシートで覆って隙間風に震えている人も多々おられるに違いない。

 自民党二階幹事長の先の発言が大きく取り上げられ批判されている。
 彼は13日、台風19号の被害を受けて開いた党の緊急役員会のあいさつで、「予測されて色々言われていたことから比べると、まずまずで収まったという感じだ」と語った。その時点で、死者が20人を超え、行方不明者の捜索も続く中での発言である。
 いや、じっさいこの我も颱風が通り過ぎた直後は、まずまずで被害は収まった、どころか、大騒ぎしたわりには大したことなかった、と拍子抜けした気分でいた。
 むろん雨は、前日から強く降り続き、これは河川の氾濫自体も起こるかもという「予感」はしていた。
 が、我ももその時点で問われれば、二階氏と同様の「発言」をしていたかと思う。それは個人の「実感」なのだから仕方ない。

 そう、人それぞれ何をどう感じとらえるかは全く違っている。昨日あたりから急に寒くなって、コタツやストーブが恋しいと思う人もいれば、先ほど街に出たら、公園では半ズボンのままサンダル履きでスマホに夢中になっている若い男がいてびっくりした。彼はたぶん寒いと感じていないのであろう。
 だから人それぞれの感覚、「私感」は大切に尊重されなくてはならないし、全員が同様の「感覚」を持つ必要はまったくない。
 しかし、今回の台風の被害は日を追うごとに明らかになってきて、現時点で、堤防決壊百ヶ所以上、住宅浸水四万棟、70名を越す死亡者、さらに行方不明の人も加えれば、おそらく百人前後の死者が出る、広範囲に大きな被害が出た激甚災害だとわかってきた。
 ならば、我も、今回は大したことなかったと、自分の地域だけ見た「実感」で全容を語ってはならないし、今さらながらその被害の大きさに心痛めている。3.11には及ばずともそれに準ずる巨大災害である。消費税増税後の日本経済にまたさらに大きなダメージを与えることは間違いない。

 二階幹事長は、迂闊につい口を滑らせたのだろう。しかし、台風通過後直後の、まだ情報がよく入ってきていない時点で、「まずまずで収まった感じ」という「私感」を、政治家、それも政権担当する党の重鎮が口にすべきではあってはならないことで、まさに颱風被害者を傷つけ愚弄する発言だと断じる。一市民が個人的に「私感」を述べるのならともかくも、だ。
 政治家は、一市民である前にまず「公人」なのだから、たとえ身内の会合のオフレコばなしであろうと、常に報じられて広く世間に流れ出る。まして政権与党の要職にある人が、被害全貌が判明する前に、20人を超える被害者が出ている最中に、「まずまずで収まった」とは、そう思ったとしても絶対に口に出してはいけないことであった。

 しかも二階氏は、その発言撤回も謝罪もすぐにはしないで、あくまでも傲岸不遜、人を人と思わぬ態度で、批判されても時間をおき「撤回」はずいぶん後になってからのことであった。それもしぶしぶに、という感じの仏頂面を貫いたままであった。きちんと心から謝罪したのか。いったい何様のつもりであろうか。
 人を人と思わぬ、傲岸不遜、弱者を傷つけ愚弄さえするのは、歴代最凶最悪の安倍政権の特質、本質であるが、安倍首相に並んで二階幹事長、この男の存在が大きいことを今回の「まずまず」発言は象徴している。

 地震や火山噴火と違い、台風ははっきり襲来の方向と時期もわかっている災害である。しかも今回の台風は、巨大で勢力もものすごいことは当初から予測されていた。
 現在百人規模の死亡者と数万人にも及ぶ被害を受けた人々に対して、これは自然災害だと言えるのだろうか。これは「人災」ではないのか。もっと事前に避難誘導できたのではないか。人災だとするならば、政府政権与党と、各地の行政、報道機関の責任もまた問われねばならないのでないか。
 これは繰り返す。毎年、この規模の台風、自然災害が日本を、地球規模で襲ってくる。人類にはそれを防ぐ手立てはあるか。まずはどう備えるか。