40年目のシバ~我が生涯最良のライブの夕べ2014年05月18日 01時59分48秒

撮影:三留まゆみ
★師匠に恩返しが少しでもできたか アクセスランキング: 162位

 良いライブだった。シバを拙宅無頼庵にお迎えしてついに念願のライブとなった。客の入りは予定されていた方が不測の理由で2名来れなかったが、関係者も含めれば16名、良い入りではないかと思う。今、八王子のご自宅まで彼をお送りして戻ってこれを記す。
 持ち込んだシバの陶器や漫画、CDも何点か売れたし、音楽以外でも「成果」はあったと思うが、何よりもソロで一時間半、巧みな話術を交え観客を笑わせつつ実に丁寧、丹念に彼のブルーズをたっぷり唄ってくれたことが嬉しい。肩は凝らないが渾身のステージだったと思える。来られた方々は皆大満足ではなかったか。

 以前も書いたが、ライブを企画して痛感するのは、観客、アーチスト、そして主催側の三者皆が満足する出来のライブはまずないということだ。良いライブであっても客が入らず興行的には「失敗」ということは常にあるし、アーチストか客のどちらかが不満足、あるいは客もアーチストも満足したとしても企画した側が納得できないライブもなくはない。その場に関わる三者全員が満足できたライブなど記憶を辿ってもなかなか思い出せないほどだ。

 が、今晩、2014年5月17日の無頼庵では。まず観客の入りもまずまずだったことに加えて客層、客の質がとても高く良く実に熱心にシバのうたに耳を傾けてくれた。当然シバもいつもよりリラックスしてたくさん語り、ギターにも歌にも気合が入った。皆が堪能したと思うが、その誰よりもこの自分が感動感激、大満足した。ここまで語りたっぷり唄い、熱く弾いたシバは大昔、吉祥寺のぐゎらん堂以来の衝撃的感動であった。そう、40年前、子供だった自分が初めてブルースという音楽を聴いたときの驚きと眩暈のような気分が蘇ってきた。

 自分には幸いにして各分野にそれぞれ師匠がいる。詩の師匠は、有馬敲氏であり、フォークソングは中川五郎、古川豪両氏、漫画ではなく、酒は鈴木翁二さん、そしてブルーズはシバである。むろん頭下げて弟子にしてくださいと頼んで、「よし、弟子にしてやる」と承諾受け入門したわけではない。こちらが勝手に私淑して、密かに心の中で「この人は師匠」だと慕い思い敬愛しているだけの話だが、それでも師匠には変わりない。つまりその人に出会わねば自分の「それ」はないわけで、ならば「師匠」と尊敬するしかないではないか。

 先にも書いたが、高校生になった頃、吉祥寺のぐゎらん堂でシバの生ライブを観て、その聴いたことのない不可思議な音楽を知りやがては深く魅了された。それこそが「ブルーズ」であり、その後、大阪や京都のブルースバンドのブルースも聞き、さらには本場米国のブルースにまで耳を伸ばしたが、そもそものきっかけはシバであった。自分にとってブルーズとは、あくまでもギター1本とハーモニカで演るスタイルのものであり、R&Bもゴスペルもソウルもラグタイムもどれもが好きだがそのルーツはすべてブルーズであることを思えばそれを教えてくれた方には心から感謝しないと罰があたろう。

 その人に高校生の時、ライブで頭を殴られたほどのショックを受け、以来カッコいい~と憧れ続けた方をついに拙宅無頼庵へとお招きすることができた。今もまだ夢のような気分である。やはり改めてものすごくカッコいい~と思った。声もスタイルも顔もギターも全身がブルーズであり、何て無頼なんだと感嘆させられた。若い頃もすごいと思ったが、今は雰囲気、存在そのもののがブルーズマンであり、リリシズムはあっても一切の甘さを排除したステージのシバはいぶし銀という言葉しか思い浮かばないほど抜群の切れ味であった。うたも演奏も語りもすべてがプロ中のプロだと鳥肌が立つ。

 自分が40年も前、彼を始めて知ったときの衝撃は今もそこにあった。長い間どれほど彼のことを思い、彼から教わったブルーズを愛してきたか。そのお礼をすることができたとは思えないが、帰りの車の中でそのことはぽつりぽつりと少しだけ話せた。ようやくようやく長い時間がかかったが、俺にブルーズを教えてくれた方に本当に有難うという気持ちをやっと話せた。
 これで恩返しができたなんて思わない。が、コアで暖かく良い観客の方々が来てくれて彼らを前にシバも気持ちよく思う存分唄えたならば企画者冥利であるしほんの少しだが恩返しできたような気がする。

 繰り返すが、歌い手も観客も企画側も全員が満足できたライブなんてまずありえない。が、今晩はそんな奇跡のライブとなりえた。どこにこんなにシバのファンがいたのかと思うほど、隠れキリシタン的にシバを慕うファンが勢ぞろいし夜遅くまで彼を囲んで話は尽きなかった。気がつけば11時半過ぎ、あの時間で皆さん無事に帰宅できたのだろうか。まさに夢の一夜となった。主宰者の自惚れかもしれないが、こんな奇跡の夜もあるのだ。

 今夜のこのライブ、自分は生涯忘れない。その素晴らしいライブを拙宅でやれた幸せと満足感を今噛みしめている。皆さん有難うございました。無頼庵という場を設けて本当に初めて良かったと思えた、満足した晩であった。

 次は6月29日の、さこ大介&みほこん。気持ちに火がつき弾みがついた。