ブックカフェ 「無頼庵」日録～あなたと本と音楽を

★見終えて帰ってきて記す。

　自分の人生で振り返ると、何回か転機となるような重要なライブが存在する。今日の林拓＆ブリジット・セント・ジョン、行けて良かった。迷い萎えがちな心に灯りがともった。ひとつの指針を得た。場所も出演者も自分は生涯忘れないであろう。
　誘ってくれた親友でんでん氏と、木馬亭以来の京都からの林拓君、それに会場で出会った旧知の赤荻氏に深く感謝したい。

　彼らの音楽を一言でいうと、幸福な夢を見てまどろんでいる気分になった。じっさいあまりに気持ち良くて何度もうとうとした。決して声高に何かを訴えたりはしない。過激なもの奇矯なものは何一つない。しかし、まさに心に染み入り、人生に倦み疲れ、へたばっていた心を癒してくれた。名前だけは知っていてもきちんと聴いたことのなかったブリジット、そして林拓の実力と魅力を深く十二分に味わうことができた。浅草木馬亭では本当に彼の素晴らしさの数分の一も自分は引き出せなかった。改めてすまなく思う。そして彼を紹介してくれたでんでん氏の審美眼、音楽センスをまたも見直した。自分は友人運にも恵まれている。

　何も説明も客寄せの派手な謳い文句も要らない。良い音楽はただそこにあるだけで良い。自分は今までなんてつまらないことに腐心していたかと今日気がついた。道はいくらでも目の前にある。ただ、それが見えなかっただけだった。
　
　ブリジットの手は暖かく柔らかく、どこか昔でかつて会ったような懐かしい記憶を呼ぶものであった。