続・死に行く者と新しい命と2018年06月16日 10時59分15秒

★子猫も何もかももうすべてどうでもいい。

 それは一昨年のことかと思っていたが、母が死んだのが一昨年2016年だったので、そのまた前の年となる。
 我が家に、黒いとても小さい子猫が、自らやってきた。

 その年、2015年の秋口だったか、ウチにいた「キャラコ」という名の雌猫がすぐ近所で事故死した。
 ずっと野良で、縁あってウチで飼う羽目となった猫だったが、元野良だけあってとても人懐こく、物おじせず、見知らぬ人にも抱かれたり触られて甘えて喉を鳴らし、近所の人にも愛されて餌をもらい、その家の前の道で寝ていて走って来た車にはねられたのか死んでいるのを発見された。
 あまりに警戒心がない猫だったので、いつかはこうなるかもと案じていたが、最悪の事態が起きた。そのことも拙ブログで書いた記憶がある。無頼庵に来られた方は、二階にも上がってきて愛想ふりまいていたのでご存知かもしれない。
 その後、我はその不遇な猫のことでしばらく鬱々していた。可哀想なキャラコのことを思うと涙が止まらなかった。

 と、そしたらば、それからさほど間もなく、この近所界隈に、黒い子猫が出没して、その姿を見かけるようになった。手のひらに乗るぐらい小さいのに、親からはぐれた野良なのか、人間を見ると逃げて絶対に捕まらない。
 ドライフードを置いておくと食べたようだが、ともかく人にはまったくなつかない。我も捕まえようとしたが諦めていた。
 そしたら、ある日の午後、その子猫は開けていた玄関から家の中に入って来て、台所の土間にしかけておいたネズミ捕りシートにひっかかって騒いでいたのを発見した。
 我はそのシートごと暴れて騒ぐ子猫を捕まえて、そのまま無理やり剥がして、我家の一番奥の部屋、父母の寝室に投げ込んで鍵かけた。

 それからしばらく子猫はずっと積み上げた布団や衣類の中に隠れていたが、餌や水を置いておくと食べはじめ、トイレもつくってやり、少しづつ人間にも慣れていつしかその部屋から出しても逃げずに家に居つくようになった。
 まるで、どこからかキャラコが死んだと聞きつけ、定数減となったのを知って我家へやってきたようなタイミングであった。それまで近くでそんな子猫は見かけなかったし、どこから来たのかもわからない。猫の世界はまったく謎である。

 その金目の雌の黒猫は、黒ちんといつしか呼ばれ我家の一員となった。そして一年後、妊娠して子どもを産んだようだったが、そのときは初産で、しかも身体が小さいので死産であった。
 そして去年の5月27日、彼女は拙宅二階の無頼庵に置いた箱の中で雄雌二匹の子猫を生んだ。その猫たちの画像も上げたし、顛末も書いたかと記憶する。

 いまも不思議でならないのだが、その子猫たちは二か月後、ちょうど可愛く育ちやんちゃな盛りに、猫ドアから外の世界に遊びに出かける年頃になったら、ある日忽然と行方不明になってしまったのだ。
 母猫もけんめいに探しまわったが、どこにもみつからず、まさに神隠しのように、消えてしまった。我もご近所界隈の猫好きの人たちに訊いてまわったが、誰も知らないと言う。
 あまりに可愛いので、見かけた人に連れ去らわれたと思うしかないが、二匹いっぺんというのはどうにも理解に苦しむ。ともかく子猫はいなくなってしまい、その後何日も黒ちんの子どもを探し呼ぶ哀しげな声はずっと続いていた。
 この子猫たちとは、たった二か月の付き合いでしかなかったが、突然の失踪はやはりショックで、我が心に深い傷跡を残した。それからしばらくの間、夢の中でも子猫たちが帰って来た夢を見た。
 
 そして今年の春また彼女は妊娠し三度目の出産をしたのである。
 この記事を読んで、何で避妊手術をしないのかと訝り憤る人も世間にはいるかと思う。が、余計なお世話である。前回の子猫の時も一匹は貰い手がついていたし、猫過ぎの父としても一匹は手元に残したいと切望していた。
 そもそも身体が小さく、無事産んでも二匹だけの子猫を前回突然失った黒ちんには何としてももう一度子どもを産ませてから避妊は検討するつもりでいたのだ。

 もう一回だけ続きます。