老犬バド、本日死す2014年08月12日 21時38分00秒

長い間お世話になりました。皆さんと天国でまた会いましょう!
★静謐な哀しみと安堵と満足感と       アクセスランキング: 114位

 これまで拙ブログで何度も記してきた我が家の超高齢犬バドが今日の午前11時過ぎ死んだ。いろいろご支援ご心配いただき誠に有難く、心から深く感謝いたしたい。齢19歳と2か月のまさに大往生でした。

 今月24日に、かなり急な話としてウチ、無頼庵でわりと人が集まるイベントが決定した。そのため場所づくりに追われて、昨日夕刻からまた水戸在住の「社員」氏を招いて山梨の古民家に古雑誌類など運びに行っていた。
 覚悟はしていたが、今朝がた山梨を出て大急ぎでウチに戻ったのが昼過ぎ。バドは一時間ほど前に眠ったまま息を引き取ったとのことで、昨日と全く同じ格好で台所の床に横たわっていた。さわるとまだ体も暖かく眠っているとしか見えなかったが、もう呼吸はしていなかった。

 バドは今月に入ってから食も細くなり、先に書いたが、腹水も溜まり衰弱甚だしくなっていた。それでもレトルトパックの高齢犬用の水分の多い流動食は口にしていたのだが、数日前からからそれも食べなくなってきた。
 固形物は摂れなくとも犬用ミルクと鶏ガラのスープなどは飲んでいたのでまた持ち直すことを期待したが、昨日あたりから水もミルクもほとんど飲まなくなっていよいよかと医師からも言われ覚悟はできていた。

 この数日よだれなのか胃液なのか、横になった口からの水分がひどく多くて下になっている顔半分がぐしょぐしょになるほどでひっきりなしに敷いたタオルを取り換えていた。昨日の午前に動物病院に行き、点滴入れながら相談したら、腎機能も衰え体外に水分が出せなくなって口から出るのではないかとのことで、いわば多機能不全で顔までむくんできていた。

 それでも意識あるときは名前を呼べば尻尾をパタパタ振って反応示したしマス坊が外出から戻れば尻尾を振って喜んでくれた。最後まで呆けずに頭はしっかりしていたと思う。
 結局最後は水さえも飲まなくなってただひたすらこんこんと眠りつづけて老親たちが傍らについていて、スポイトで口開けて水を飲まそうかと相談していたら気がついたら息をしてなく、まさに眠るように、いや、眠りながら静かに死んだそうだ。
 死に際には間に合わなかったが、いっさい苦しむことなくまさに眠りながらの酔生夢死ならぬ、「夢死」を遂げたわけでそれはまさに安楽死、本当に良かったと思う。

 思えば、去年の春先から足が弱り歩けなくなってきて人間が腰に巻いたベルトで後ろ足を持ち上げて散歩させていた。そしてその状態のまま一年が過ぎ、今春からは散歩もままならぬようになり、抱きかかえて庭先で大小便させていた。さらに今月に入ってからは前足すら萎えて歩けなくなってほぼ完全な寝たきりとなった。そしていつも下にしていた片側の腿に床ずれもできおできのようになってしまい膿も出た。

 傷口に薬を塗ったりその治療をしつつすぐに横になってしまう体を抱き起して支えながら餌をやる。しかし好き嫌いが甚だしいのか飲み込むのが苦しいのかしだいに食べるものも限られ我々は何なら彼が食べるか手を尽くして毎日頭を痛めていた。
 マグロなどの刺身や牛レバーなどの生なら食べるときもあり、かなり高い食材をやった。食べるときもあれば嫌がるときもあり、シュークリームのようなものなら好んで食べたので、今日も韮崎から彼の好物のそれを買い求めてきたところだった。

 実は母もこのところバドの介護で疲労甚だしく、土曜日から風邪ひいたのか高熱が出て立川の掛かりつけ病院へ急患扱いで連れて行き点滴入れてもらっていた。日曜は熱も下がっていたので、今回の山梨行を予定したのだが、また昨日から熱がぶり返し点滴打ちに昨日午後はまた病院へ。
 幸い薬が効いて熱は下がって戻ったので、社員氏も招いて荷物も運ばねばならなかったこともありバドのことと母の様態も心配でならなかったが夕方から出たのであった。自分もまだ腰痛が癒えず正直なところ飼い主の体力気力はもう限界であった。

 雨の高速道路を走りながら戻ってももうバドは生きていないだろうという予感はしていた。そしてやはり一時間前に死んだことを知らされて昨日家を出たときとまったく同じかっこうで横たわっている彼を見、撫でながら思わず有難う、よくがんばったねと言葉が出た。少しだけ泣いた。でも正直ほっとした。
 しかし、死んでくれて良かったとか助かったとは思えない。もう二十年近く一緒に暮らしたのだ。どんなに大変でももっと生きていてほしかった。まだ死の実感はわかないが過去のことがあれこれ思い浮かぶ。
 彼がウチに子犬で来たとき、まだ自分も三十代の若者だったのだ。そして彼の妹のロビンやロビンの旦那のブーさん、そして彼らの子、ブラ彦も含めて皆であちこち山へ海へと出かけた。人間の数より犬の数が多い大家族のときもあった。

 今、皆その頃の、昔からの犬たちは死に去り、いるのは老いたブラ彦とその若い嫁さんである二年前に来たベルコの二匹だけとなった。

 幸い今日は体力ある社員氏もいたので、彼に頼んで庭のイチョウの木の下、彼が元気なころ使っていた彼の犬小屋の横に大きな穴を掘ってもらった。穴の大きさを確認のためバドの鼻先から尻尾までメジャーで測ったら約80センチもあった。もともと大型犬ゴールデンレトリバーのハーフでもあったから全盛期は体重は20キロ以上あったと思う。
 それが最後に病院で量ったら10キロを割っていた。まさに骨と皮になって魂の抜け殻となった体であった。明日の朝、その穴に埋める。

 すべてが頃合いだった。もうすべてが限界でもあった。彼もそう悟り、死ぬのに良い日だと思い今日死んだのだと思う。図体は大きかったが、とても温和で大人しく賢かった。世の中には我がままで吠えて自ら要求する犬も多々いるのだが、彼は常に控えめで温和で不平不満は言わず出されたものは何でもよく食べた。病気一つせず、予防接種以外に病院にかかったことは一度もなかった。
 そんな手がかからなかった良い犬だから最後はここまで面倒をみることになってもそれもまた仕方あるまい。

 ともかくこれでバドは死んだ。長かった老犬の老人たちによる介護はついに終わった。喜びはないが、正直ほっとしている。覚悟はしていたはずだがまだ実感がわかない。夢見ているような気がする。心にあるのは静謐な哀しみと最後まで何とか看取れたという安堵のような満足感だけだ。

 ご声援といろいろご心配おかけしました。皆さまにも平和と神のご加護を祈ります。本当にありがとうございました。バドは天国へ旅立ちました。