死者は、生者を煩わすことなかれ、ならば。2022年09月29日 06時22分56秒

★安倍「国葬」とは、政治利用とすべてを不問、礼賛するためのもの

 巷間、誰であれ死去の報が流れる折など、上記の言葉が口の端に上がることが多い。
 が、元々の出典とされるものは、やや異なり、「生者は死者の為に煩わさるべからず」とあり、その前だか後に「葬式無用、弔問供物固辞する事」と続く。
 これは画家、梅原龍三郎が生前から認めていた遺書にあった言葉だそうで、死んでいく当人として、まだ生きている他者に対して、できるだけその手を煩わせたくないという気遣い、心遣いだと言えよう。
 そう、死者は生者をあれこれ煩わせ、面倒かけてはならないのである。

 が、先日、父を看取り送った者として思うのは、ほんとうの死者は、さほど生者を煩わすことはない、ということだ。
 煩わすのは、まだ生きているが、近く間もなく死にゆく者、死に臨む人たち、つまり老人や病人であり、我は、父がコロナで発熱、入院してから死までの約二か月間、ほんとうに日々昼夜気が気でなく、まさに心身煩わさせられた。
 いつ病院から急な電話連絡があるかと、音楽もかけられずギターも弾けず、テレビの音も小さくして、いつ携帯が鳴るかと日夜耳を澄ましていた。

 いま、骨壺に収まった、かつて大男だった我が父は、もう何も言わないしどこへも行くことはない。ただ静かに畳の上に鎮座している。
 まだまだ諸機関への手続きや親戚方などへの連絡など多々早くやらねばならぬことは山積しているが、ウチのお寺の墓所に納骨の日も決まったので、ともかくそれが終われば、もう何一つ我を煩わすことはない。
 楽で有難いと思うが、生きて家にいたときは長年我を煩わせた人が、もはや死んでしまい一切我を煩わすことがなくなってしまったことは、またそれは深い哀しみの元と言えなくもない。
 父が普段使っていた、杖や帽子、施設に行くときの、まだ一式着替えやパジャマなど衣類が詰まったバックなど目にすると、これをすぐさまきちんと処分することは今はまだとてもできないと思う。

 人は生きて、他者を煩わしてこそ生きていた証であり、死者が我らを煩わすのは、最後の葬送のときぐらいしかない。
 つまり、葬式とは、死んでいった人が、生者だった証として他者を煩わす最期の機会であり、生者は、その儀式としての集まりにおいて、自らの生と向き合い確認できるのだから、それもまた無駄、無意味だとは今は思えない。

 我も梅原画伯のように、一切無用、と思うときもあるが、葬送の儀式と会葬は、死者当人のため以前に実は残された生者のためのものだから、やはり、煩わせてもよいのではないか。
 死にゆく者が、死者は生者を煩わすべからず、と遺訓を残すのは、建前としてカッコいい気がするが、実際のところ、その当人はもうこの世にいないのならば、後のことは、生者たちの好き好きに任せて一切構わないと思える。画伯のように一方的に拒絶するのはいかがなものかという気がしている。

 明治だか大正の、あるいは戦前の作家の誰だったか忘れたが、死後、クリスチャンだったことがわかり、訃報を知り集まった彼の仲間たちは、そのキリスト教式の葬儀に馴染めず大いに不満を持ち、その遺体をどこそこに運んで、皆でその亡き友人の棺桶を囲んで痛飲したという故事を読んだ記憶がある。
 そう、それでいいのである。死とは、当人の個人的なものだが、家族親族、友人たちにとっては、公的なものに近く、ならば最後の別れとしてとことん煩わさせてもちっとも構わない。

 それにしても安倍晋三前首相の「国葬」は酷かった。自らのお友達を優遇し彼の政治に反対する我らを敵として切捨て、長期政権ゆえ驕り高ぶり、恫喝と忖度とで我が世の春を謳歌してきた者が、どうして我ら国民の税金で賄う「国葬」に値するのであろうか。
 そうした手続きも一切国会に諮ることなく、岸田現政権はまたも自民党のお家芸である、同じ「丁寧な説明」を何度でも繰り返していく、として仲間内で決定して強行してしまった。
 ふつうは、死者は生者をもう煩わすことは少ない。が、さすがに国民を金持ちと貧困層、弱者と強者に分断してきた安倍晋三は、死後もまた我らの国を分断してとことん煩わせてしまったのだ。
 そう、安倍晋三にこそ言いたい。死者は生者を煩わすべからず、と。

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