カセットデッキの名機復活!2013年11月05日 09時42分22秒

★修理に出していたティアックのカセットデッキが復活した。 アクセスランキング: 131位

 すごく嬉しい出来事を記す。以前もちょこっと書いたかと思うが、何でもアナログ家電なら修理してくれる藤野のシゲさんのところに出していたティアック社製のカセットテープのデッキが一昨日修理が完了したと戻ってきた。まだきちんとオーディオに繋いでないが、テープは再生も送りも巻き戻しも問題なく稼働している。ものすごく古いデッキだったのでもう捨てるしかないと諦めていたものがまた使えるとは夢のようだ。本当に嬉しい。

 そのデッキは、カセットデッキのトップメイカーだった、優良オーディオメーカー・ティアック社製のff-80という機種。たぶん1970年代のものだと記憶する。どうしてウチにあるのか、自分では買った記憶はないが、誰かから譲ってもらったのかもしれない。
 当時でも7~8万そこらしていたのではないか。たしか同社の同モデルの最高機の一つ下の機種で、カセットデッキとして当時、そして今も最高レベルのデッキだ。動いていた頃、使ってみてカセットでもこんなに音が良くなるのかと驚嘆した記憶がある。そのわけは、スタビライザー機能にある。

 レコードでも同様なのだが、こうしたアナログオーディオは、いかに走行を安定させるかが一番重要で、そこにふらつき、ムラがあると音質は歪んだりノイズが出たりしてその素材そのものの真の良さ、本来の能力は再生できない。
 レコードの場合も、意外に皆さん知らないようだが、カートリッジの性能の問題以前に、レコード盤をターンテーブルにいかに未着させふらふらぐらぐら揺れないようにするかが最重要なのだ。何しろレコードはすぐ反ったり歪んだりする柔らかいものなのだから。

 そのためには穴のところ、レーベルが貼ってある部分に重石にあたるものを乗せて少しでも盤を固定してターンテーブルに密着させなくてはならない。そうすると走行は安定し、ふらつきは減り音質は格段の向上する。ただ、それはかなりモーターにも負荷がかかるのでプレイヤー自体がどっしりしたダイレクトドライブの本格的なものでなくてはならない。安物の昔の電蓄程度のプレイヤーではそんな重石を乗せると機械そのものが壊れてしまうだろう。その重石にあたるものをスタビライザーと呼ぶ。

 アナログのオーディオカセットテープを用いるカセットデッキも理屈は同じで、ヘッドでカセットテープの磁性体をトレースするのだが、テープ自体が左から右へと巻かれて動いていくときにふらつきが起こる。それを防ぐことさえできれば走行は安定し音質は良くなる。だがカセットのデッキにはそんな機能は元々なかった。
 そこで他の会社はどうしたのか知らないが、このカセットデッキの老舗ティアック社の高級機種は、カセットテープがふらつくことのないようカセット本体を固定させるスタビライザー機能が付いている。これによりカセットテープとはいえ、音質は格段に向上する。ただ、今もデッキはいくつか新品が出回っているし、ラジカセ的なものはいくらでも存在するがそんな機能があるものはこの地球上にどこにもない。ティアック社、タスカムのブランドで出しているデッキにもそんなものはない。そもそも今は高級機種など作られていないしすべて海外生産の、ただテープが再生できればそれで良いという程度の安物なのである。

 このデッキが壊れて動かなくなって、近くにあったティアックのサービスセンターに持って行った。確か入手した当初、不具合も一度は直してもらった記憶もあるのだが、やがてまた動かなくなって、そこに持ち込んでもこれはもう交換するパーツがないので直せないと断られてしまった。応対した窓口の技術者もこれはすごく良い名機なのでもったいないと残念そうな顔していた記憶がある。
 そう、確かに今は販売終了後7年だかそこらでその機種のパーツの保存が終わるので修理がきき、修理したくてもその材料がメーカーにもなく直すことはかなわなくなるのだ。海外ではありえない話だが、それもまた資本主義ということなのであろう。つまり直して長く使い続けるより新しくまた買え、そのほうが安いから、という理屈だ。

 しかし、このデッキなどは、同機能の新製品は出ていないし、もはやカセットデッキ、カセットテープ共々風前の灯火なのであるから、修理を考えた当時でさえこのデッキに勝る、または機能的に及ぶ機種は存在していなかった。ということは、あのすばらしい音質はもう再生できないのかと嘆くしかなかった。
 以降、何度もその壊れた古いこのティアックのカセットデッキはゴミとして処分することも考えた。どうせ動かないのだから、ウチは博物館でもないし場所をとるばかりだから捨てるしかないはずであった。
 だが、もしかしたらいつか直ることもあるかもしれないとその都度心が迷い、けっきょく21世紀も13年過ぎる今の今まで、捨てずにただ場所を占めていたのだ。たぶん製造から40年は過ぎていることは間違いない。まあ、ウチにはそうしたガラクタが他にもいっぱいある。

 それが友人を通して知った、藤野在住の奇特な方の手で、メーカーの技術者でもパーツがないので修理できないと突っ返されたこのデッキが直って戻ってきたのである。まさに夢のようだ。捨てないで良かった。奇跡が起きた。実に有り難いことである。

 さあ、これで、これから溜まりにたまった、自分が中学生のとき70年代初頭から録音してきたカセットテープを全部これで再生して、最良の音質でデジタル化していく。そのシステム、ソフトもそろえてある。ただ、再生するにあたり良いデッキがなかったのだ。
 このティアックの高級機が復活したのだから、いよいよ機は熟した、時は来た。この読者の方で、大事な昔録ったカセットテープが手元にあり、それをデジタル化したいと願う方は当方で順次その作業を代行していく。

 今ならまだ間に合う。まだできる。カセット文化万歳!という気分でいる。