母の退院の日が決まりました。2011年03月19日 22時05分10秒

★自分もまた人生と生活を「復興」させたい。

 これまで拙ブログでは昨年から体調を崩し今年の2月から入院し先に腸の開腹手術をした筆者の母のことについて逐次書いてきた。その母だが、昨日担当医と面談があり、経過説明の後にとりあえず治療は終わったので、来週にでもいったん退院してもかまわないと話があった。

 いぜん食事の量は全体の半分程度も食べられないし、まだ軟便も続いていて体重も全然戻っていないが、先日点滴も外され、食事自体もほぼ普通食に戻り、術後の経過もまあ良好なので、特に入院させておく理由がなくなったということだと思える。手術後2週間での話である。

 今のご時世、家にいるより病院にいたほうが三度三度食事も出され、不慮の事態が起きたとしても安心だという思いもあるが、自分の気持ちとしてはともかく退院でき、家に帰ってこれるということだけで、本当に嬉しいしまだ夢のような気さえしている。

 書くことさえ憚れ、はっきりとは書けなかったが、一時期はかなり重篤な状態で、もはやこのまま死もありえると覚悟もした。しかし幸い何度かの危機を乗り越えて、腸閉塞に関しては手術も行えて、それも成功し下痢は続いてても腸も繋がったので口から再び食べられるようになった。そしてとにもかくにもついに退院できる運びとなったのである。彼女はまだ新居では暮らしていないのだ。

 今おもうは、大震災での被災者方には失礼だが、津波にのまれて奇跡的に助かった方々ではないが、九死に一生を得たとはこのことかという気がしている。実は何度も諦めかけた。運が良かったとか、母は体力気力が幸いあったとか理由もなくはないが、一重に当ブログの読者の方々も含めた多くの人たちの支えと励ましがあり、そのおかげで弱い自分も諦めず挫けず頑張れたからだと思っている。本当に感謝したい。有難い。まさに神のご加護があったとの思いでいる。

 告白すると彼女の腹の中にはまだガンがかなり潜伏していて、決してこれで完治したわけでもなく、今後は抗がん剤治療に取り組むということになり、生きるための戦いはこれで終わったわけではない。じっさいのところあと何ヶ月、あるいは何年も生きられるのかもわからない。ガンは手術で採りきれたわけではなく今も進行しているはずだ。

 しかしまずは今回の入院、手術でずっと食べられず、食べても調子を崩していた要因に関してはなくなり、状態も改善されたかと思うので、昨年の秋から続いていた原因がわからず皆を悩ましていた胃腸の障害については一応治ったと言っても良いかと思う。

 先のことはわからない。しかし今の時代、健康な人だっていつ何が起こるか、いつまで元気で無事でいられるか何の保証もない。それは自分もまた同じであり、死は決して遠くの無縁のものではなくなった。

 母の治療に関しては、まずは家に戻り、少しゆっくりしてからどうガンと闘っていくか、あるいは共存してうまくやっていくか、親戚も交えてよく考えたいと思う。

 ともかくこれからは父母と共に過ごせる残された日々を丁寧に慈しむようにして生きていこうと誓った。ならば一日一日を無駄なく大切に過ごしたい。自分の人生さえも気がつけば平均寿命まで生きられたとしてもあと25年ほどなのだ。
 父も母も自分もこの歳までまあ無事に大した苦労も大病もせずに気楽気ままに生きてこれた。そして今回もとりあえず一つの危機、危険な峠を家族全員で乗り越えられた。実に運がいい一家だと今あらためて気がつく。
 自分はずっと幸福であった。しかし今まではそのことにさえ気がつかず、常に不平不満を口にし苛立ち、ここではないどこか別の場所を探していた。自分は不幸だとさえ考えていた。小さなつまらぬことに囚われていつも頭を悩ましていた。しかしそれは全てどうでも良いことであった。死の前にはすべては意味をもたない。
 
 今回の母の病気はいろんなことを教えてくれた。何より恥ずかしく思うのは、今まで自分は他者の痛みや哀しみに関してつくづく鈍感であり、人を思いやる気持ちにかけていたということだ。苦難のときに遭って、人の助けや励ましが身にしみた。有難いという言葉の意味がわかった。そして神の存在もようやく確信した。

 昨日の夕方帰り道、病院を後にして家路に向かうべく車を走らせた。ちょうど夕暮れ時、向かう方向、西に陽が沈む頃で、車のフロントからは茜雲の空と赤い夕日が落ちていくのが見えた。その雲の一つが、右下から左上へと細長く、筋状に、まるで階段のように延びている。それを見たとき、ふいに「天国の階段」という言葉が思い浮かび、メロディーが聴こえ深い感動にとらわれた。気がつくと涙が頬を伝わっていた。

 まずはここから、自分もまた人生と生活をもういちど復興させたいと心に誓った。

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