余震が引き起こすストレス、PTSD2011年04月10日 11時50分41秒

★大震災から一ヶ月が過ぎても

 3.11のあの日から一月経つが、今も余震が続いている。いや、震源地が三陸沖とは限らず、まったく違う場所でも起きているのだから果たしてそれは余震と呼べるのだろうか。
 今朝方も弱い揺れがあり、眠りが浅いときは寝ていてもその揺れではっと目が覚めて起きてしまう。その揺れている間は常に不安な気持ちになる。

 Post Traumatic Stress Disorder:(心的)外傷後ストレス障害という言葉は今では誰でもご存知であろう。いわゆる心の傷であり、辛いこと、ショックなことを体験すると、後々までトラウマとなって鬱々とし精神的に苦しみが続く。

 考えてみると、自分だって普段は忘れていることなのに時折思い出すと気持ちが萎え、屈託することがいくつかある。人の感情とはそうしたもので、時間とともにその心の傷はやがては癒えていくはずなのだが、今回の大震災では今もって余震が頻繁に続いていて、その都度また恐怖の感情が甦る。ほとんど被害のなかった自分でも余震に脅かされるのだからこれでは被災された方々は精神的に参ってしまうことだろう。

 友達に都内浅草の古いマンションに住んでいて、今回の大地震の揺れで室内の家具など倒れ落ちメチャクチャになった女性がいる。そのとき部屋にいたそうだが、ケガもせず命に別条はなかったものの、何週間もその後始末、生活復旧に時間をとられたと聞いている。
 その人は数週間が過ぎ、ようやく気持ちを切り替えて、再スタートを始めようと考えていた矢先の先日7日のこと、またかなり強い余震が起きた。それ以来どうしたことか彼女はまた鬱々としてしまいせっかく前向きになった気持ちが振り出しに戻されてしまったそうだ。今も立ち直れず苦しんでいるがどうすることもできない。

 これは典型的なPTSDの症状であり、困るのは、こうして余震が続く限り、そもそもの発端となった恐怖や苦しみ、哀しみが新たにまたその都度甦ってくる。一番の解決策は、余震の起こらない全く違う環境に移って時の経つのを待つしかないかと考える。しかしそれはおいそれとできるはずもない。

 文豪谷崎潤一郎は、細雪などの作品から何となく関西出身の作家と言うイメージがあるが、実はチャキチャキの江戸っ子で、本来は東京人であった。しかし、大正末の関東大震災以降、生活の拠点を以後ずっと長く関西の地に移し、その地で多くの代表作を生みだした。文学史には、大震災後、沢山の文士が東京を離れ関西方面に移住したと記してあるが、今にしてその理由が実感できる。
 もちろん家屋が倒壊したりして生活ができなくなり転居を余儀なくされたという人もいただろう。しかしそれよりもこうしてその後も余震が続くと作家の鋭敏な神経は不安で疲弊して感性がおかしくなってしまう。ならば地震の少ない関西方面へ行こうかと誰もが考えたのだとよく理解できる。

 まあ、阪神大震災を挙げるまでもなく、プレートの上に乗っかっているこの狭い日本の中で、地震が起こらない安全な地はどこにもないはずだが、ともかくまず揺れが起きないところに行くしか大地震によって起きたPTSDを改善させる方法はないように思える。

 問題は今も全国規模で大震災以降連動?して大きい地震が多発していることで、いったいこの国はどうなってしまうのか原発事故の今後も含めてますます不安は高まるばかりだ。
 がんばろう東北、がんばろう日本というかけ声はかまわない。しかし、PTSDになってしまった人たちにガンバレ、がんばらないとダメだと励ますのはしてはならない。肩を叩くよりもそっと手を握り締めること、不安に苦しむ人には、苦しみは皆同じだ、一人ではないんだと安心させることが肝要だと自分は考える。
 彼女のために何ができるか、どうしたら良いかずっと考え続けている。

コメント

_ kudo ― 2011/04/11 12時41分14秒

kudoです。
記事の内容とは関係ないのですが、ある人のサイトで紹介されてたこちらのデモ、ご存知でしたでしょうか?
ほとんどのメディアが完全に黙殺している模様です。今後の動きが気になります。
http://getnews.jp/archives/110107

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