すべてを赦し受け入れていく・22017年01月11日 18時06分55秒

★「発狂」していた我は何も見えていなかったのだ。

 気がついたら目の前に、自転車と老婦人が倒れている。彼女の叫び声で我にかえったのだ。まったく何も見えていなかった。

 車は停めたが、慌てて彼女と自転車を歩道側に連れて行った。彼女は、信号は青じゃないの!渡っているのに何で停まらないの!と怒り興奮している。
 慌てて大丈夫ですか、お怪我は? と訊いたが、自ら彼女自身立ちあがって歩いて、自転車を引いていけたので、どうやら大したことはないようだった。 
 ただひたすら詫びて、我の前方不注意を詫びたが、老婦人は警察呼んで!と言うので、携帯で110番した。しばし待って、まず警官が自転車で来たが、警官に、病院は行きますか、と訊かれた彼女は、やや迷ったものの、医者に診てもらうと伝えたらば、次々救急車のみならず消防車まで何台も到着して急に辺りは騒然とした状況となった。

 交通課の一隊も到着して事情聴取を受けた。そして、警官が被害者である夫人と加害者である我の携帯でお互い連絡がとれるようにセットし、彼女は救急車に乗せられて近くの大きな救急病院に連れて行かれてしまった。
 それから現場検証して、どの時点で、どうして事故に至ったか確認をとられた。信号は青だったのか、赤から青になって動き出したのか、どの車線でどこでぶつかったのかと。
 信号は青だったはずで、そのまま広いバイパスの大通りに入り、二車線あるうち右側の車線にハンドルを切った。そこまでは意識がある。
 しかし、まったく彼女の乗った自転車が横断歩道を渡ってきていることは見えなかったと正直に答えた。

 そう、じっさい、彼女の姿は何も見えなかった。気がついたら自転車は倒れ彼女は何やら叫んでいたのだ。はねたとかぶつかった感覚も何もない。ただその一瞬、何も見ていなかったのだ。そして事故を起こした。
 現場を仕切っていた交通課の部長からも問われたが、居眠りしていたわけではないだろうし、見えないはずがない。何か障害があるのかと。我はぼんやりしていたのだろうか。ただ漫然と無意識にハンドルを切ったのだろうか。
 一つだけはっきりしているのは、早く山梨に行くため買い物を急がないとと気持ちは焦っていたことだ。まずダイソーに行くことだけ考えていた。

 何故横断歩道を直進してきた自転車の老婦人が全く見えなかったのだろう。そのとき目は開いていたし意識もあったのに。交通事故をまたもしでかした。大きなショックだが、何故見えない、観ていなかったのだろうか。何よりそのことが不思議でならなかった。
 幸い、自転車は倒れ、老婦人は転んで腰を打った程度で現時点ではすんだようで、彼女に乗り上げたり引いたわけでもなく、我の車にもぶつかったときにできる傷跡はなく、彼女の自転車も損傷は何もなかったようだった。
 彼女は先に病院に搬送されてしまったので、我だけその場でかんたんな調書をとられて、我はやっと解放された。時間にして一時間そこらだったか。自転車は警察が警察署に運んで行った。
 それから、もうダイソーで買い物どころではなく、ともかく慎重にハンドルを握りながら家に戻った。彼女のケガが大事に至らないことをただ祈りながら。
 そして、車の保険会社に連絡して、事故を起こしたことを報告した。ちょうど連休に入ってしまうので、担当者が動き出すのは連休明けになるとのことだった。

 少しして事故に遭わせた相手方の婦人Oさんに携帯で連絡した。時刻は昼過ぎだった。
 ちょうど診察も終わりこれから会計だとのことで、自転車がないので困っていると言う。警察まで歩いていくことになると。
 で、ならばその病院はウチの近くでもあったので、すぐに迎えに行きますと伝えて、彼女の治療費と診断書の代金もこちらが支払い、彼女を乗せてそのまま警察署に出向いた。

 車中、ケガの状態を訊いたが、どうやら打ち身程度で骨に損傷はないとのことだった。ほっとした。そしていろいろこちらの事情なども話したら、彼女の方が大騒ぎしてして迷惑かけてしまったと逆に恐縮してしまい、とんでもない!こちらが全面的に悪いのですからと謝り続けた。
 お歳は75歳だそうで、70歳までヘルパーをされていたとのことで、我の介護の話に心底同情してくれたようで、ああやさしい方だなあ、有難いと思った。そんな方を我は事故に遭わせたのだ。

 そして彼女が調書をとられている間、警察内のソファーで待って、後日、保険会社から連絡があることとご住所などを確認したうえで、自ら自転車をこいで帰っていく彼女の後姿に頭を下げ見送ってから我も家に戻った。

 そして家に着き、玄関わきの部屋に備えてある母の遺影と位牌の前に立ち今回の件を亡き母に話した。また事故起こしてしまったと。

 写真の母はにこやかに笑っているだけだが、我は涙が止まらなかった。ただただ情けなくてとめどなく涙が溢れた。泣き崩れた。

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