母の抗癌剤投与後の覚書2016年02月09日 21時53分54秒

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 母の退院後三日目となる。明日水曜にまた、立川のかかりつけの病院で担当医の診断を仰ぎ血液など採って調べるのだが、土曜に戻って来、今までは平穏無事である。おかげさまで有難いことだ。

 朝昼晩と体温を測り、記録しているが幸い37度を超すことはなく、老人らしく平熱の36度前後で落ち着いている。医師からは、7度超したらまたすぐ立川に連れて来いと言われているので、まあ今回の発熱騒動は終息したと考えても良いかと思える。

 これからのことは、癌の進行とその対策についても今は何も考えていないが、まず今回の抗癌剤投与とその予後について今さらだが記しておくべきかと思う。というのは、国民の二人に一人が癌に罹り、三人に一人が癌で死ぬとも言われている昨今、できるだけ多くの人に様々な情報は知れ渡ったほうが良いと思うし、やがて我が身も同様の事態を迎えると予測、覚悟して、そのためにも「抗癌剤」を投与するとどうなるのか今一度書き記しておく。

 我が母は、4年前、卵巣が原発と推定される癌で、大腸が癒着し腸閉塞のような状態となり、癒着した大腸と原発部位である卵巣など摘出手術を受けた。その後すぐに抗癌剤を半年間月一間隔で投与された。
 以後、約3年以上、癌はなりを潜め、体内に癌細胞は外科手術などでは取り切れず、残っていることは確認されていたが、活動していなかった。
 その間、癌に対して何か薬とかも何も処方されず、ひてすら丸山ワクチンを週に三回打ち続け、ときたま山梨のラジウム温泉増冨の湯に浸かりに行くぐらいのことしかしないでも無事であった。
 が、去年の春先から癌の再発が確認され、じっさい実体のある部位として、母のヘソ下、腸管膜というところに癌の固まりは当初数センチの大きさでエコーなどで確認され、やがてそれはじょじょに肥大成長し始めて来た。

 母は今年85となる。どのような癌治療を用いるか当人も家族も判断を迫られた。高齢ゆえ、もう一切の治療など抗癌行為は放棄して、患者よ、癌と闘うなと説く本のように、そのままこれもまた天命だと受け入れるべきかと考えもした。
 しかし、現実のはなし、大腸に再び癌が転移していったりすれば、手術の前のように、腹部の痛みと下痢や嘔吐などで口から食事は摂れなくなりどんどん痩せて弱っていく。それがどのくらい続いて死期を迎えるのかはわからないが、ただそれを諄々と受け入れ、見守るしかないことは家族としても不可能と思えた。
 ならば、医師からも、お母さんは高齢だけど元気だから、ともかくまずやってみますかと、勧められ、抗癌剤を再び開始することとなったのだ。
 前回のときも、母の場合その薬が体質的にあったのか、先生の処方が適切だったのか、ほとんど副作用はなく、頭髪が抜けた程度で、その薬は効果出て、癌は収束したのだから、今回も同様の期待が持てた。
 そして、年が明けて、1月の19日に、今回初めての抗癌剤が二泊三日で入院して二日目の朝から始まった。終了後医師から聞かされたのは、今回はまず様子見もかねて、通常の六割の分量しか用いなかったと。それで効果があるのか疑問視もしたが、結果としてそれでも副作用が現れたと思えるのだから、抗癌剤は怖いと今改めて思う。

 俗に、世に知られる抗癌剤の副作用とは、頭髪など体毛の減少、抜け毛以外に、吐き気や嘔吐、頭痛、めまい、ふらつきなどが現れるとあちこちで語られ書かれている。今回、母の場合はそうした投与最中などにすぐ現れる不快感などは全くなかったと言う。多少、家に戻って体のだるさなどは訴えていたが、発熱などもなく、ごく普通の生活を過ごしていたのだ。ただ、ご存知のように、投与後は白血球の数値が下がってしまう。あまり下がると、免疫力も低下し危険となるので、白血球?を増やす注射を打たねばならない。

 その翌週、ちょうど抗癌剤投与後一週間過ぎた水曜日に、検査のため立川のその入院した病院に行き、担当医に会い血液も採って調べた。何故かそのときは、減少は見られず7000もあり、まあ、六割しかいれなかったからねー、と医師からは言われて、念のため2月1日に再度検査するからと決めて帰された。
 ところが、その日の夕方頃から、母は体のだるさを訴えはじめ、夜になって熱を測ったら39度はなかったものの、38度台の熱があり、風邪をひいたかと当人も家族も思った。というのもその週は月曜から連日、伸びるに任せて来たイチョウやケヤキなどウチの庭木の伐採のため職人を呼び、母は寒い中、表に出て指示したり応対していたので、その疲れもあってのことだと思い込んだ。うちにあった風邪薬を呑ませて、ひたすら安静にさせて様子みていた。

 それから数日・・・朝になるとほぼ平熱に下がったり、37度ちょっとしか熱はないのだが、午後になると必ず上がってきて、毎晩38度台まで出る。風邪特有の咳や鼻水などないし、三日家で寝込んでも症状は相変わらずなので、このまま週末になって病院が休みになると心配でもあり、土曜日の午前に大慌てで病院に母を連れて行った。
 そして近くの病院で、説明して血液を採って調べたところ、白血球数が水曜に比べて半減していて、こりゃ大変だと立川に移り、担当医の判断ですぐさま入院となった。そしてそれから一週間、抗生剤を連日投与し続けてやっと熱は平熱に下がり無事退院となった。そうした経緯は既に書いた。

 今回、退院後、病院側から提示された我が母の「入院診療計画書」なるものを改めて読み直したところ病名欄には「好中球減少性発熱症」と記してある。そして病状の欄には、「抗癌剤を投与してから10日間経過しました。原因不明だが、熱が上がり、感染症が違われます。腸管由来とも考えられます」とある。そして治療計画欄には「抗生剤投与・好中球を増える注射・補液で経過観察します」とあり、じっさいその通りこの一週間、退院の日の午前まで、抗生剤の投与と血液検査、検温を繰り返し、ようやく退院許可となったのだ。
 ※「好中球」という聞きなれない言葉があるが、医者のはなしだと、白血球の減少の中で、いちばん問題とされるのが、その「好中球」という「球」だそうで、それが減少すると増やすべく即何らかの手を打たないとならないのだそうだ。

 今回の発熱、原因はけっきょくよくわからないのだが、やはり単なる風邪とか疲労によるものではなく、あきらかに抗癌剤をやったことによる「副作用」だと担当医は考えているし今我もそれに同意せざるえない。
というのは、退院後、ネット上の医療のサイトで、抗癌剤副作用で検索したり調べてみたところ下記のように記してあるのも確認したからだ。

★抗がん剤治療開始後7~10日頃から、白血球などの血液成分をつくる働きが低下してきます。白血球が減少すると、細菌と闘う力が弱くなり、感染しやすい状態になります。このため肺炎を始め、口腔内、皮膚、尿路、肛門、性器などへの感染に対する注意が必要です。白血球数は、治療開始後10~14日くらいで最低となり、3週間くらいで回復してきます。

感染症の主な症状

下記の症状がある場合は、できるだけ早めに主治医に報告してください。
 ・ 発熱(38.0℃以上)、悪寒おかん(さむけ)、発汗、咳、黄色の痰
 ・ のどの痛み
 ・ 軟便、下痢(化学療法の副作用の可能性もあります)
 ・ 排尿時痛
 ・ 頻尿
 ・ 血尿 etc.
  ――― 埼玉医科大学国際医療センター/抗がん剤治療を受けられるあなたへ(抗がん剤治療(化学療法)の副作用)4. 抗がん剤治療(化学療法)の副作用  より転載。

 母が発熱し始めたのは、そこにあるように、まさにちょうど『抗がん剤治療開始後7~10日頃から』、であり、白血球が減少したことにより、この発熱は感染症にかかったものであると推察するのが、医学的判断であろう。じっさい、38度以上の発熱を確認した段階で、すぐさま病院に行くべきであった。が、その日の午前に受診したときは、血液検査の数値も異常なかったため、夜になって熱が出てきたが、これは単なる風邪だろうと素人考えで判断してしまったのだ。
 今さらながら我は、いや、我が母も含めてウチは皆が迂闊で愚かだったと思う。もしこのまま家で発熱したまま風邪薬だけ呑ませて母を放擲してしまっていたらさらに病状は悪化していたことは間違いない。毎度ながら遅れたものの何とかギリギリセーフであった。

 そして今回は六割方の投与と言っても抗癌剤とは強い、危険な薬なのだと今さらながら恐ろしく思う。というのも母の頭髪はこの数日来目に見えて抜け出して来て、後姿、背中には抜けた白髪がびっしりくっついてギョッとしてしまった。
 このまままた全部頭髪は抜け落ちて坊主状態になるのか、抜け毛も途中で収まるのかわからない。が、たった一度の、それも通常より少ない量でも髪の毛は確実に抜け落ちてくるのであった。

 担当医ではないが、ならばやはり、もう抗癌剤はこれで中止とすべきであろう。考えが変わった。前回のときは、母はまだ八十代に入ったばかりで、それでも今よりずいぶん若く基本体力もあったのであろう。だから幸い副作用など毛髪が抜けるだけで済んだのだ。やはりもうこの年齢では、癌を殺すために、強い毒素を体内に入れるのは危険すぎるのであった。癌より先に、肉体そのものが副作用で殺されかかった。

 これからのことはまだ何も決められないし決めてもいないが、また新たに抗癌治療を行うにしろ、もう何もしないにしろ、母も含めて老人の体調には細心の注意で対応せねばと自戒している。まず常に検温をはじめ今まで以上に何事もより慎重に、より丁寧にやっていくことだ。まあ、それはこの我が身においても同じことで、もう以前のように、気楽に夜遅くまで出歩くことはもはや不可能だと思い知った。

 まあ、それもこれも悪いことではないだろう。どんなことでもやってみないとわからない。そして適切な判断をどう、できるだけ早くすべきか、それこそ経験を通して学び取っていく。抗癌剤は強く怖い薬ではある。だが、適切に用いれば効果はほぼ必ず出ると信ずる。車の運転と同様に、正しく適度に節度を持って慎重に丁寧にやっていけば良い。過度に怖れる必要はないが、過信や気の緩みが命とりになるのである。

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