古本音楽家宣言・22012年01月03日 09時47分42秒

 こう考えた。

 まず始めに言葉があった。言葉は思いの発露であった。それが記録とするために文字が生まれ石や甲羅、骨に彫り付けるところからやがては紙に記しついには本となった。
 一方、言葉は文字以前に伝承として祝詞やアイヌのユーカラのように節やメロディーをもって語り継がれてきた。やがてはそれは「うた」、民謡のようなものへとなっていった。やがてはそれは商品として流通するようになりその最後のカタチはレコード・CDであった。
 「嬉しい」「楽しい」「哀しい」「暑い、寒い」「お腹すいた」といった感情が言葉となり、やがては文字に、うたへと変わっていったが、そのどちらも同じところから出ている。人の心である。

 そして今、電子媒体の時代となって、出版としての「本」「雑誌」は終焉のときを迎えている。同じく音楽もダウンロード、ネット配信の時代、もはやモノとしてのカタチを必要としない。すべてはファイル・データとしてのみ流通していく。そんな時代に本、つまり古本と音楽=うたはどうあるべきだろうか。
 時代の節目に生きている。自分には子も孫もないが、おそらく21世紀後半、孫子の代にはモノとしての本も音楽も消えてなくなっていることだろう。

 では、ならば、だからこそ、何をどうするか。何ができるのか。

 こんな自分でも半世紀以上生きてきたからそれにりに知識や経験、多少の技術や資料は手元に持っている。それらを活かして本と音楽、特にフォークソングに関して何かできることはないものか。一応気兼ねなく人を招く場所も出来た。
 幸いにして二回のプレオープニングイベントでは予想を越える来客があった。ならば、自分はこの場所で、たとえたとえ自分一人だけであろうとも古本音楽家として活動を始めても良いかと思えてきた。
 その活動とは、まず研究と資料整理、そしてそれらを世に伝えるべくワークショップである。もちろん両国フォークロアセンターとも連動してやっていきたい。

 はっきりいって、日本のフォークソングは、今も精力的に活動続けるファーストランナー、中川五郎氏や、岡林、高石さんたちがいなくなったら消えうせてしまう。むろん、歴史的資料としては、フォークルの「帰ってきたヨッパライ」やシューベルツの「風」、ジローズの「戦争を知らない子供たち」のようなヒットしたスタンダード曲は後世に「日本のフォーク」として語り継がれ残るであろう。しかし、その根源たるスピリッツや時代背景、当事者たちの思いなどは時とともに雲散霧消して記憶する者も知る人もいなくなる。それはあと10年だと考える。

 うたも本も時代と密接に結びついている。それはどんな時代であったのか、過ぎたときとそれを検証しないとならないし、変わるもの、変わってしまったものと時を経ても変わらないものを見極める作業もせねばならない。

 非力で浅学の自分がどれほどのことができるのか。それは昨年の春一番の会場で、風太の手下、若きスタッフから嘲られ罵られ軽蔑されたときからの課題であり、リベンジだと思っている。彼らに認めてもらおうなんて思わない。これは自分自身のこだわりであり、自らに課した使命である。
 そう、自分は10代の頃から、あの吉祥寺のぐゎらん堂でフォークソングとふれあい、ずっとうたとはなにか、何をうたとしてうたうか、フォークソングとは何か、ずっと考え問い続けてきた。まだはっきりとした答えは出ないが、残りの人生はそうしたことの研究、史料編纂、そして伝承伝達に費やしたい。古本音楽家とはまずそのこと、そうした行為に他ならない。

 正直なところ、老親の面倒で忙しくなってしまい、今なかなか時間取れなくどれほどのことができるか不安であるが、このことは趣味以前にライフワークであり、少しづつでもうまく時間つくって進めていきたいと思う。願わくば、関心ある方々、どうかご参加およびご協力願いたい。笑われるかもしれないが、こんなことは自分しかできないと思っている。やる人もいないはずだ。
 また、他にもっと最適な才能と行動力ある研究者の方がいるとしたらご教示願いたい。自分はその人に全面的に協力を惜しまない。

 これから何をしていくか。それはおいおい書いていく。

コメント

_ モジロー ― 2012/01/04 21時15分57秒

フォークソングスとブックスをつなぐ「古本音楽家」の志、鶴見俊輔さんのいう「限界芸術」的なおもしろい試みです。なにか新しいことを創りだすには、なにより人が集うことができる「場」が必要です。増坊さんはそれをつくられたわけですから、魅力的な文化を発信できる可能性を秘めていると思います。新しい仲間の輪は「場」を介してだんだん大きくなっていくことでしょう。

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