西荻のみ亭30周年記念パーティー2012年04月07日 12時53分32秒

マスターも加わって昔のバンド出ています。
★店と客の良好な30年を窺い知る。

 終電2本前の青梅線で帰ってきた。むろん日付は変わってしまった。かなり疲れたが、いろんな意味で面白かった。そしていろんなことを考えさせられた。むろん、ライブコンサートとしてもとても楽しめた。

 西荻窪の南口にある、マスター一人のごく小さな居酒屋、のみ亭が今年の4月で31年目を迎える。それで日付は変わったが、今日4月7日に、西荻北口のライブハウスを借り切って、記念のパーティがあった。
 のみ亭は土日祝日は、マイクなどPAなしでライブをやっているライブハウスという顔もあるので、日頃のみ亭によく登場するミュージシャンや常連客の唄い手たちも多く登場して、豪華盛りだくさんのライブコンサートでもあった。各自時間の制約もあって数曲程度であったが、お祝いに駆けつけた岡大介をはじめ多彩なミュージシャンの演奏をたっぷり堪能できた。何しろ4時から何となく始まって、終わったのが10時を過ぎていたのである。総計で何十人のミュージシャンが登場したのか。

 ライブコンサートとしても素晴らしく魅力的かつそれぞれユニークなミュージシャンが次々と登場してとても面白かったが、全体の雰囲気としては同窓会であり、この日のために遠く離れた客も駆けつけてきたり昔の頃の思い出を語る客が多く、正直なところ他校のそれに参加しているような気分であった。自分は、昔、その30年近く前、二十代の頃この店に来た記憶はあるのだが、実際のところライブを通して親しく通うようになったのはこの数年の話であり、今日のパーティでは顔見知りの人もいなくはないが、昔なじみのかつての常連さんが多くやや所在ない異邦人の気分でいた。かなりディープなどろどろの人間関係がそこには垣間見れた。

 だが、それがつまらないということではない。一つの店が同じ経営者、マスターで30年間も続いて、そしてこれからも続いていくという秘訣のようなものが漠然とだが掴めたことは良かったし、何よりも今現在の店とまったく変わらないゆる~い雰囲気、だらしなさギリギリののどかさに満ちていてとても居心地が良かった。つまり居心地の良い店は客もまた居心地の良い人たちばかりだということだ。だから今日の集いも皆だらだらで当然居心地が良い。誰一人カリカリイライラしている人はいないし、皆が好き勝手に自由気ままに思い思い楽しんでいた。

 つまるところそれがマスター、やっちゃんの人柄と許容力、包容力、魅力なのだと思い至る。自分が知る阿部ちゃんが生きていた年までの大阪春一番コンサートにも存在していたフリークな部分であった。ある意味それが70年代的ということなんだと思う。きっと。だがそれはなかなか続かない。

 時代が移るに連れてそうした自由闊達さ、奔放さは失われていく。一見敷居は高そうでクセのある客たちばかりだが、中に入ってしまうと皆親切で裏表なく、金儲け第一主義でない、酒飲みや変人、おバカたちの集まる店、たまり場は少なくなっていく。時代はどんどん世知辛くなり客も歳をとり、無茶がたたって死ぬ者も多くなる。だが、いつの時代も世間の競争主義から落ちこぼれたり背を向ける者は少なからずいるし、世の常識と相容れない屈託した思いを抱いている者も多々あろう。そうした人たちは音楽を通してのみ亭を知り、また新たな常連客たちとなっていく。そうした関係こそ、良い店が商売として無理なく成り立つ最良の関係なのだと気がついた。しかものみ亭が素晴らしいのはそれは意図したことではなく自然体だということだ。

 自分は客としてはあまりに身勝手で、西荻から遠いところに住んでいるということもあって、ライブの時ぐらいしか顔出していなかった。だから本来この記念のパーティーには参加する資格もなかった。が、いつもこちらが立てた企画、演ってもらいたいミュージシャンの演奏の場として快くマスターには応じてもらっているので、恩返しの思いで、今日はお手伝いにはせ参じた。記録係りとして拙い写真、録音を収めた。
 自らもイベンターのはしくれなので、当事者は当日は進行だけに追われて誰かが写真など撮る係にならないときちんと記録が残らないものだと痛感しているものなので。

 個人的予想としては、たぶんのみ亭はあと10年は続く。客は歳のわりに皆元気でよく食べよく呑んでいたし若い客の姿もかなりいたからだ。次回はのみ亭40周年、俺もやっちゃんも60代半ばとなっているわけだが、そのためにも無事に生きながらえないと。そう帰り道ほぼ素面の頭でいろいろ心に期するものがあった。疲れたが良い一夜であった。これもまた自分にとっての春一番なんだなあ、きっと。

 この日、登場したすばらしいミュージシャン達についてあれこれ書き記しておきたいとも思うが、それは機会あれば別ブログで。皆誰もが素晴らしく魅せられたが、個人的には岡大介の演者、パフォーマーとしての達成度、安定度に気づかされ大いに感心した。もう彼は自分が知るあたふたとふらつきある若手の岡君ではない。もう、堂々たるプロの芸人であった。