居ながらにしての時代・22012年05月04日 22時19分18秒

★今やレンタルCD、DVDだって人は利用しない

 今の人は信じられないかと思うが、昔は、増坊が子供の頃は、貸本屋という商売があった。それは昭和40年代の頃で記憶では、うちの町にも駄菓子屋と並んで一軒はあって、そこでマンガ本を借りた記憶がある。むろん、今だってレンタルCDショップでコミックスを貸すそうしたサービスをやっている店もある。が、その店は、小説本などもあったのか記憶は定かではないが、書き下ろしのマンガ本も置いてあって、もうその頃は少年サンデー、少年マガジンなどの週刊マンガ雑誌も出ていたのに「貸本マンガ」もまだかろうじて流通していたのだ。
※話はそれるが、水木しげるなどもそうした貸本マンガから出た人で、知る限り貸本で書き下ろしをやった経験があるのは山上たつひこ氏世代までだろうか。貸本マンガ文化については稿を改め書き記しておきたい。

 立川には、自分が学生時代になっても一般書籍を扱う貸本屋が残っていて、たぶんそれは80年代になってたかと思うが未だに!とびっくりした記憶がある。貸本マンガは一冊たしか5円ぐらいから、その立川の店は一冊50円~100円程度は貸し出し料とっていたかと思える。
 そうした商売は、80年代になるとレンタルレコード店としてひところ一大ブームを迎えることになる。レコードのような傷がつきやすいものを貸して商売とするのだから今思うとかなり無理有る気がするが、当時はレコードそのものが高く、LPは一枚3000円近くはしていたので、数百円で利用できるそうした店は貧乏な若者達にとっては大いに助かった。むろんラジカセやミニコンポの普及などハード面の伸びにソフトの価格がついていかなかったこともある。
 そしてそのレコードは、すぐにCD、コンパクトディスクと映画のビデオにとって代わり、レンタル業界は、著作権で一時はもめたが、ツタヤなどの大規模レンタルチェーンも誕生し、個々に営業していた町のレンタルビデオショップは淘汰され、皆どこもホカホカ弁当の店になってしまった。それはともかく・・・

 そして今、そのツタヤなどかつて一世を風靡したレンタルショップが今かなり苦境にあると人伝てに聞いた。今では旧作はどこも一枚100円だし、入会金無料をうたって利用者拡大にけんめいの努力をしている。なぜ経営が大変か、理由は簡単で、今の人は店に借りに行き、また返すという手間が面倒だからなのである。そう、今では家に居ながら金さえ払えば音楽も映像もダウンロードできるし、契約さえ結べば貴重な古い映画でも何でも見放題の時代なのである。

 貸本でもCDでもDVDでも借りたらば返さなくてはならない。これは忙しい現代人にとってはかなり苦痛を伴う面倒なことで、図書館を利用することも多い自分もすぐ返却日を過ぎてしまう。公共図書館の良い点は、あまり返却を強くやかましく言ってこないことで、何より無料なので多少の手間はガマンも許容もできる。が、レンタルショップだと遅れればすぐ延滞金はつくし、その返す日までに観たり聴いたり録音したりと気ぜわしい。だから返さないで済む方法のほうを人は必然的に選ぶ。

 じっさい、返さねばならないという気苦労と今や各種契約も安いから個々のダウンロード代なども含めトータルに考えれれば、レンタル業界にまず勝ち目はない。21世紀の今、いちいち外へ出てレコードショップを回ったり、レンタルショップに足を運ばなくても金さえ出せば、それもカード決済で、何でも手に入れられる。パソコンなどインターネット環境にあればの話であるが。

 居ながらにして何でも手に入り何でも見聞きでき、知ることすら可能である。そして何でも取り寄せることもできる。とてもつもなく便利で楽である。この便利さこそがまさに夢の21世紀であろう。だが、本当にそれは良いことか。オレはいまインターネットでこれを発信しつつ甚だ懐疑的である。