非日常生活の中の小冒険2013年10月15日 20時35分58秒

★台風の雨の中、峠の山道で四時間半かけて帰ってきた。 アクセスランキング: 144位

 前回、また山梨へ行くことだけ記して、慌てて犬二匹、ブラ彦とベル子を連れ、雑誌と文庫を荷台に満載させて山梨の江草スタジオ、古民家へと向かった。本当は連休あけて今日火曜に行くつもりだったが、10年に一度の大型台風が来るのでその前に行って帰ってこようと思ったのだ。

 以前も書いたが、このところ頻繁にその古民家に通っているのは、今ウチの近くに倉庫として借りている長屋を空にして年内に解約しようと決めたからだ。そこに入っている本や雑誌類を少しづつでもせっせっと山梨へ移動させているのである。今回は、社員も老親も同行せず、マス坊たった一人での運搬&泊りである。一人で行くのは初めてでもある。

 行きは、連休の最終日であったけれど下りだったので道は全く混んでいなかった。でも荷物の積み込みに時間がかかり、出たのが夕方で、着いたのも7時半近くとなってしまった。
 麓のコンビニで買った弁当を食べてその日はすぐに寝てしまい、今朝は早く起きて雨が降り出す前に車から本を下し物置にとりあえず押し込んだ。それから犬たちと山道を一時間ほど散歩してたら雨がぱらつき始めやがて本降りとなったので、街道筋の中華料理店で早めに昼食をとり、ディスカウントスーパーで買い物してから中央高速は韮崎から入った。時刻は一時半ごろだった。

 普通ならば、高速に入れば、そこからほぼ一時間ほどで、八王子のインターに着く。片道110キロほどなのである。ところが今日は、雨ということもあったのだろうが、やや道が混んでいたしスピードも控えめにして慎重に走っていた。それでも渋滞はなく、これなら3時にはウチに着けると考えていた。
 そしたら、電光表示に、一宮御坂~勝沼間は事故で通行不可と出ている。それでも車は普通に動いていたから、たぶん車線規制して片道だけでもノロノロでも通れるだろうと考えていた。が、一宮のICが近づいたらそこから先は通行不能と本当になっていて、どの車もすべてそこで一般道へと下ろされてしまった。仕方ない。これまでの運転歴ではこんなことは記憶にない。

 勝沼からまた入れるとの精算所の人は言ってたので、一般国道20号線をやたら立ち並ぶブドウ販売所を横目にしばらく走り、また勝沼ICから高速に入った。さあ、これから飛ばして遅れを取り戻すぞ、と思ったのもつかの間、笹子トンネルを抜けて談合坂あたりから渋滞が始まってしまった。どうやらまた事故で相模湖あたりまで渋滞しているらしい。車はノロノロと止まっては動くことの繰り返し。途中で一般道に下りたりさせられたから既にその時点で4時頃。イライラはしないがぼーと眠気に時々襲われてきた。気がつくと前の車の尻が目の前にあり、うっかりするとぶつかるところである。このままいったいいつまでこの渋滞が続くのかさすがにうんざりしてきた。かといって、まだここからだと一般道だとかなり遠い。

 一番近いICは上野原で、そこで下りるかどうか迷っていた。そしたら、後ろからパトカーが、路肩を走ってきて、どうやら先でまた事故があったようで、相模湖まで車線規制という表示が出た。渋滞のところに車線が減る。それでこのまま高速にいると何時間かかるかわからないし、こちらも眠くて事故りそうだと考えて上野原ICが間近だったので下りることに決めた。
 かなりの車が同様に考えたらしく、やはり上野原で下りた。しかし20号線、甲州街道はそうした車でまた渋滞気味らしく、20号線に出るまでが既に渋滞している。そこでマス坊は考えた。表示の看板に、「棡原、あきる野」と出ているのをみつけた。あきる野はウチの隣町である。このまま混んでる20号線をだらだら走るよりも山を越えて五日市へ出ればすぐだろうと。
 それがこの台風の雨の中、細い曲がりくねったかなり高低差のある峠道をえんえんと走ることとなるとはそのときは思いもよらなかった。

 ご存知かと思うが青梅、奥多摩の多摩地区から中央線側、中央道とは、近いようだが、その間に陣馬山をはじめ、標高千メートル級の山々がいくつも連なっている。だから、山梨側、甲府などに東京・多摩地区から出るには、昔ならば、奥多摩湖を越えて丹波山から塩山に出るルートしかなかった。そして今はもう一つのとして、五日市の奥、桧原村からトンネルを抜けて上野原に至るルートで、かなりの山道だと地図でも知れる。今回、自分は上野原から初めてその道を走ることとなったのだ。

 走り出してすぐに後悔した。トンネルがあるとはいえ、千メートル級の山道は狭くかなり急カーブで、ときおり台風の強い雨もフロントを叩き、おまけにガソリンも残りは四分の一ほどしかない。マス坊の車は古いから当然カーナビも付いていない。他の車もなく人家もほとんどない山道をぐるぐる上り続け、道に迷ったりしてたらガソリン切れで遭難するかもと考えた。犬たちもいるし食べ物も少しはあるから何とかなるだろうが、今晩は帰れないだろうと考えた。

 まあ、それでも棡原の集落を抜け、ひたすら山道を走り続け長いトンネルを抜け、東京都側の桧原村に出てようやくほっとした。しかしそこからひたすらまたぐるぐるとくねる坂道を下り続けようやく五日市の駅前に至る迄一時間近くもかかった。結局、ウチに帰って来れたのは夕刻6時を少し過ぎていた。韮崎のインターに入ったのが一時半過ぎだったから四時間半も走り続けたことになる。一回も休憩で止まることなくしかも山道を延々走ったのだから最後は意識がもうろうとしていた。走り慣れているはずの五日市の街でも疲れのためか雨と油膜の反射で視界がひどく悪く緊張していたせいか、すごく遠く感じられ時間が長く感じた。もしかしたら半分意識は飛んでいたのかもしれない。

 まあ、事故らずにともかく無事に帰ってこれたのだから、すべて良しとしたい。運転嫌いの自分がこんな雨の日に初めての山道を何時間も延々走り続けたのだからちょっとした冒険である。アドレナリンが出まくったのか今は気分はハイというかコーフンしている。ウチに着いて車から降りてもしばらくはフラフラと酒に酔ったような酩酊状態であった。今も頭の芯がしびれたような気持ちでいる。頭がぐらぐらしている。もうこんなバカなことは二度としまい。天気の良い日中ならやっても良いかもしれないが、山梨から多摩に出るのには、やはり高速道を使うにこしたことはない。一時間半で行けるのに何も山を越えて曲がりくねった山道をアップダウンを繰り返し何時間も走る必要ないのである。

 まっ、その高速が通行不能だったり渋滞が激しかったからついうっかりとこんな冒険をしてしまったわけなのだが。あーしんど。