「笑えるうた」は不真面目か、不謹慎か2018年04月06日 20時10分18秒

「笑えるダンディ」こと藤しんいちろうで果たして笑えるか、あるいは笑われるか
★いよいよ明後日、谷保かけこみ亭で「笑えるうたが聞きたいぜっ!」コンサート開演!

 世には説明するまでもなく様々なジャンルの音楽がある。そしてその「うた」のテーマも様々である。
 いちばん多いのは当然のこと、愛のうた、ラブソングで、失恋も含めて古今東西昔からそうした愛の喜び、別れの哀しみ、失恋の苦さをうたったうたは星の数ほどある。
 そしてそれに次いでこのところ多いのは、応援ソングというべきか、誰かを励ます、元気にさせる内容のうたで、今のJ・ポップなるものの大半はそうしたもののように我は思える。

 では、一方少ない類のものは何かと考えると、一番は、内省ソングだろうし、次いでは、コミックソング、笑えるうたではないだろうか。※内省ソングとは何か説明しなければならないが、スマップの「ヨゾラノムコウ」やよしだたくろうの初期のものを思い浮かべてもらえれば何となく感じはつかめるかと思う。

 むろんそうした「笑い」のうたを専門に唄っている人は多々いるし、お笑い芸人的なシンガーは嘉門達夫他けっこう思い浮かぶ。ただ、残念ながらそうしたうたはまずヒットすることはないはずで、唯一思い浮かぶのは、関西フォーク創世の礎となったフォークルことフォーククルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」ぐらいではないだろうか。あるいはソルティシュガーの「走れコータロー」か。
 次いではその流れを受けての高石友也・中川五郎の黄金コンビによる「受験生ブルース」ぐらいだろう。かの岡林にも彼独自の笑えるコミックソングはいくつもあるが、発禁になったりいろいろ制約あってレコードになっていないものも多く、世間的にヒットしたとはとうてい言えない。

 そして何より残念に思えるのは、そうした笑えるうた、笑いを誘ううたは、プロテストソングやメッセージソングよりかなり格下に見られていることで、歌い手そのもののレベル以前にその歌自体が低く扱われていることは間違いない。
 確かに反戦平和とか人種平等とか強い確かな正しいメッセージがあるものこそ「うた」だと我も思うし、何よりもそうした「志」がないものは単なる無内容な今どきの恋愛ソングと大して変わらないという批判を受ける。
 ただ、ではコミックソング、笑えるうたはうたとして格下だとかレベルが低いという評価はまったく当たらないと我は思うがどうだろう。
 どんなジャンルの芸能、芸術であれ、いちばん難しいのは客なり聴き手、読み手などの受け手側を笑わすことであり、それは実は泣かすよりも数段大変だと昔からよく言われている。

 「笑い」というのは、人類だけが持つ高級な感情であり、人はつい誰かが泣いている人から、それにつられて貰い泣きはしても貰い笑いはできないように、笑いこそけっこう繊細かつ複雑な感情によって起きる行為なのである。
 よってまして「うた」や音楽で観客や聴き手を笑わせるというのは、実はとてつもなく難しい。むろん落語という笑いに特化した芸能があるわけだが、落語はある意味一人演劇的な芸能であり、それよりもさらにいちばん難しいのは実は音楽そのもので笑わせるクレージーキャッツ的な行為であり、次いではコミカルな内容のうたそのものでであろう。
 ただコミカルなことをうたにしてもそれで聴き手が笑うかどうかはまた別の話であって、かの「帰ってきたヨッパライ」も「コータロー」もコミカルかつ音楽性も高く、楽しく子ども受けする曲調だったからあれだけヒットしたのだと気づく。そしてある意味、それらは時代を巧みにとりこみ一時代を象徴していたと今にして思える。

 さて、明後日4月8日の「笑えるうた」コンサートである。
 企画した者から言わせてもらえば、何で毎度の「護憲と反戦・平和のための共謀コンサート」の流れで、番外編としてでも「こんな時代だからこそ、笑えるうたが聴きたいぜっ!」てことになるのか、ご不審の方もいると思うので説明したい。
 
 要するにうたとは何でも良いのである。その歌い手の思いを表現するにして、何も堅苦しく真正面から熱いメッセージを込めなくてもかまわないのだと我は考える。
 替え歌しかり風刺ソングしかり、じっさい我々がやってきた日本のフォークソングとは何でもありであった。ゆえにそこから、帰って来たヨッパライも走れコータローも生まれて聴き手の喝采を浴びそれなりに評価され注目を集めたのだと信ずる。既成の発想、商業路線のレコード会社主体ではそうしたユニークな自由なうたは生まれなかった。
 では、フォークルは単なるコミックバンドだったかというと、その後は、イムジン河や、哀しくてやりきれないなど非常に優れた佳曲をうたい、その音楽性の高さを世に知らしめたのは言うまでもない。

 そうした視点に立つとき、そろそろ我の周囲にいる「笑えるうた」中心に唄っているシンガーたちに一度はきちんとスポットをあてねばならないと思い至った。
 じっさいこれまでも「共謀コンサート」の中で出てもらおうかと思いはしていた。ただ、やはり皆が真面目に熱く反戦や護憲について真正面から唄っているさなかに、例えば藤しんいちろうのような者を加えると顰蹙買うかもしれないと怖れて二の足を踏んでいた。
 が、思いは皆誰も同じで方法論の違いなのだと我は信ずる。うたに上下はないし、真面目なうたが正しいとかそういったうたを唄っている人がエライわけでは絶対ない。
 逆に、ある意味異端ともとられるジャンルのうたを得意にしている方のほうが我はスゴイと思うしきちんとそうした人たちにスポットをあてたいと思う。じっさい彼らは飛んでもないテクニックの持ち主だったり異能の天才なのである。

 というわけで、4/8日、これまでとはやや毛色の違う、我が知る限り本当に面白くユニークな「笑えるうた」をうたってくれるシンガーたちをお招きした。どうか、堅苦しいこと抜きに、単に笑えるかを確認にだけでもお越し願いたい。
 毎度ながら投げ銭制だし、出入り自由で、午後5時半頃から夜9時頃までだらだらゲラゲラ?皆でやっております。
 初めての試み、盛況になるべくどうかよろしくお願いします。