古本稼業再考・消えていくのは本だけではない・52012年09月21日 21時17分05秒

★ブックオフ等のこれからを憂う。

 東京でもこのところ曇りがち雨もよいの日が続き、ようやくだがだいぶ涼しくなってきた。今日も晴れ間もあったが朝晩、ザーと通り雨のような雨が降った。9月も終わりに近づき、季節はようやく秋へと移っていく。でも陽はいつしかすごく短くなっていて、今では6時で真っ暗である。夕方に昼寝をする習慣のある自分は、先日起きたら外が真っ暗だったので夜中かと思い慌ててしまった。明日は秋分、これからは駆け足で秋から冬へと季節は慌しく進む。もう今年も四分の三過ぎてしまったのである。

 さて、古本屋の稼業よりも本について、本をとりまく昨今の状況についてだらだら書いてしまい徒に回を重ねてしまった。書き出すときはいつも一応書くべきこと、書くことにいたるテーマ本筋はあるのだが、書いている途中にあちこち脱線し、気がつくといったい何を書くつもりだったのか?自分でもよくわからなくなってくる。まったく情けないし申し訳なく思う。お付き合いしてくれた人にすまないではないか。
 それに古本屋といってもしがないネット古書店でしかなく、きちんと組合に入って店舗を持って活動しているわけではないのだから僭越なことこの上なく本職の方からはお叱りを受けよう。まあ、それでも一応、商売人の端くれとして本について古本について思ったことを書かせてもらった。
 と、古本屋という職掌はこれから先どうなるのだろうか。新刊でも本が売れないことは古本でも本が売れないことと同義であり、これはネットでの古本の価格動向でしかないが、いわゆる話題作、ベストセラーになった本は、すぐに「1円本」となってしまい、もうそこには古本としての価値もなくなってしまう。だから自分は、もう今出ている本、現行本と呼ぶとして、そうした本はもう店でもネットでも扱わないことにした。

 つまりブックオフなどの新手の大型古書店へ行けば、100円均一の棚に並んでいる本は、ネットでは売れるはずがない。何故ならそこに送料が別途かかるわけで、新刊をアマゾンから買えば送料はかからないのに、中古だと本代価格そのものは1円だとしても別に送料として250円とられてしまう。つまり、ブックオフへ出向けば100円で手に入る本が251円するのである。※なのに1円で出品する者たちが後を絶たないのは、それでもそこに、送料分を加味してごく僅かな儲けがでるからだ。そうした出品者は皆ブックオフ同様の大型古書店だと自分は踏んでいる。

 だから今ウチで出しているのはほとんどが現行本(新品)は出ていない古書の類であり、人はそれなら多少は高くても他に出ていないが故買ってくれるのである。それも中心は数学や物理、医学などの専門書である。おそらく今後古本屋が生き残る道はそうした学術古書、専門書、稀覯本をどれだけ集められるかだろう。それらは電子書籍の時代だからこそ、データとしてもまず「復刊」されることはないだろうし、あくまでも本物の本としてのみ価値を持つ。

 増坊のネットでの「自店舗」ではそうしたアマゾンのリストにもない本を中心に並べていたのだが、既に売り切れた本であるのに、その本を探している方から問い合わせが今も何度もある。また自分が古本屋だと知ると呑み会の席でも「実は○○という本をずっと探しているのだが・・・」と本探索の相談を持ちかけられたりする。つまるところ古本屋の生きていく道、居場所、仕事とはそうしたところにしかないのだと気づく。じっさいのところ、今でも、いつの時代でも本好きはどこにでも必ず存在している。そうした人たちを相手に細かいサービスで応えていくことだ。電子書籍の時代だからこそ、電子化されない本に価値が出る。
 自分もそうした古書が手元にある限り細々と古本屋稼業を続けていこうとは思う。ただ、もう本をとりまく世界に発展は望めない。ならば傍ら別に新たな収入源を求めていかねばならない。今さらコンビニのバイトなどできないだろうしこの歳でこれからどうやって生きていけば良いものか。

 実は今日、秋川のブックオフにウチで売れなくなった1円本と化した本、雑誌を段ボール箱にして大小8個ほど持ち込んで買い取ってもらった。持ち込んだものの三分の二は値段が付かなかったが、引き取って処分しもらうことにして、評価額は182冊で約3千円であった。どうせアマゾンでは売れず紙のゴミとして捨てるしかない本に値がついたのだから満足だし嬉しい。おかげ様でだいぶ本の山が片付いた。いや、氷山の一角でも。

 ただ、こうした現行本中心に「古書」は扱わないブックオフのような新大型古書店は今後どうなんだろう。それこそ持ち込まれた本にも値がつかず、すべて100円で売るしかないとしたら、たとえタダ同然、一冊10円で買い取ったとしてもそう儲けは出ない。
 ブックオフ商法は従来の古本屋観を覆した画期的なものであったが、モノが売れない低価格競争の時代においては自らの首を絞めることになる。本以外のものも買取り扱ってはいるが、昔ながらの古本屋は残っても近い将来こうした大型古書店こそ潰れるのではないか。それは小回りのきかない恐竜が滅んだように。

 と、これではあまりにも尻切れトンボである。あともう一回だけ本の価値と読書の意義について書いてまとめとしたい。