平成30年間と半世紀50年を思うあれこれ・中2019年03月05日 23時40分15秒

★昭和の終わりの頃と平成移行時のこと

 30年数か月で終わりを迎える「平成」という時代であるが、10年ひと昔、という言葉を借りるならば、三昔、ということになる。
 そのぐらい大昔のことだととらえる人もいるかもしれない。じっさい30年というと一世代であり、つまり、人が生まれ育ち成人して子をつくり、新たに次の世代に繋ぎ渡す年月が30年なのである。
 ゆえに、もはや生まれも育ちも「平成」という世代が、立派な社会人として活躍して家庭を営んでいてもちっともおかしくない。
 じっさい我の周りにもそうした立派な「平成人」がいる。しかし、その始まりそのものが、ついこないだ、という記憶を持つ者として、何とも不思議な気持ちにとらわれる。そのときは、この世に存在しなかった世代が、しっかり大人としてそこに居ることにだ。
 明治や昭和に比べるとかなり短い「平成」だが、30年は、それなりに長い、一つの固まり、ある時代区分としてきちんと考え直さねばと思う。

 平成は、1989年、昭和64年1月8日から始まった。その前日の7日、昭和天皇裕仁が亡くなり、昭和というとてつもなく長い世紀がついに終わったわけだが、その日、我はどうしてたのか。
 我は、その崩御の日、その頃付き合い恋人となっていた女の子と、近くの昭和の森テニスコートに、手に手を取りお遊びでテニスをしに行った。今から思うと、この自分がそんなことを、と思い半信半疑でもあるが、それは間違いない。つまりそれだけ若く、まだ「青春」時代だったのだろう。
 途中の消防署の前を通ったら日の丸の国旗が半旗になっていて、何かヘンだな、とは二人で思った。が、それが天皇の死を意味していたことは一汗かいて家に帰ってからテレビで知った。
 そして翌日から、新元号が発表され「平成」という新時代の大騒動が始まるのである。

 その頃は、前年の秋頃からか、天皇の容態がじょじょに悪化して来て、その暮れも何度も輸血と下血が報じられ、もはや危険な状態だとわかってきていた。かなりの高齢でもありいつ亡くなられても、という「雰囲気」が世相には蔓延していた。
 しかし、それでもけっこう長く持ちこたえられていたから、まだすぐには、であろうと我も思っていたから、その死の報にはちょっと驚かされた。そして翌日8日、改元がなされ「平成」の時代が始まったのである。

 その昭和の終わりの歳末から正月にかけては、陛下が死にそうだとということで、今思ってもじつに何とも重苦しい雰囲気がこの国には満ちていたことをまず記さねばならない。
 国全体に陛下がこんな状況のときに、メリークリスマスも、明けましておめでとう、どころではない、という風潮が広がり、歌舞音曲の類は自粛を余儀なくされ例年のお祭り騒ぎはひかえざるえなかったからだ。天皇を敬愛し心配して回復を祈っていたゆえ、そうした国民もいたかと思うが、マスコミも含めて国家の無言の重圧が蔓延し何とも地味なクリスマス、正月になったと記憶する。
 前年の秋の頃か、車のテレビCMで、井上陽水が車に乗っていて、車窓から「お元気ですか!」と語りかけるのがあった。メーカーも車種も忘れたが、そのCMに、陛下がこんな状態であるのに、不謹慎だとクレームがつきとりやめになったりもした。
 国家の象徴である天皇の容態によって国全体が沈黙を余儀なくさせられたと今振り返って思う。陛下の体調を案じ自粛せねば、そう国民は忖度させられたのだ。
 
 そうした国民が困惑し自粛せねばならない事態は、そもそも代替わり、改元は、天皇が亡くなるまで行われないという、人の死という不確定かつ不条理な問題に基づいていたからで、今回の現天皇の自主的退位は、まさに国民のことを思う大「英断」だと我も思える。早くから、退位の日時が決まっていれば、準備も進み全てに予定が立つのである。あの昭和の終わりの憂鬱な沈滞を繰り返してはならない。
 ※むろん天皇制など廃止すればすむ話だというご意見は当然だし賛同もするが、それは今はさておき。

 改元は一日にして始まり、新しい元号の時代となるわけだが、人の暮らし、生活は何も変わらない。そうした移行の手続きは、出来るだけ簡便でスムーズであるべきで、後は、その新しい時代区分の中で、記録に残すべき何が起きるか、そして人はそのときどう生きるかだけだ。

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